プロレスデビュー直前 長島☆自演乙☆雄一郎インタビュー

茂田浩司

【t.SAKUMA】

 東京・竹芝のZERO1道場。そこには「日本で一番熱い男」大谷晋二郎や日高郁人が目を光らせる中、若手レスラーと激しいスパーリングを繰り広げる長島☆自演乙☆雄一郎の姿があった。デビュー戦に向けて約2カ月間掛けて作り上げてきた「プロレス仕様」のボディー。約10キロ増量して背中と肩が分厚くなり、遠目にはK−1ファイターの面影はない。
 指導する大谷はこう訴える。
「真剣にやることが大事なんです。彼はプロレスに真剣に打ち込んできて、ここまでよくやってきましたよ。だから認めてやってください!」
 長島のプロレスデビューが発表されると、プロレス専門誌やスポーツ紙を中心にメディアで大きな反響を呼んだ。ただ、注目の高さの一方で「K−1を潰さないと言っていたのになぜプロレス?」と違和感を覚える人や「どこまでできるのか?」と懐疑的な人もいる。
 果たして、長島☆自演乙☆雄一郎は5月5日・後楽園ホール「ブシロードレスリング」でどんなプロレスを見せようとしているのか。実に3時間以上に及んだZERO1道場でのハードな練習後、インタビューを敢行した。

僕がプロレスのリングに立つ理由

【t.SAKUMA】

――スパーリングを少し見ましたけど、かなりハードな練習ですね

 格闘家として参戦しますけど、しっかりとプロレスの練習はしてます。試合が決まってから体も大きくしてますし。今日はこの後、ウェイトに行こうと思ってましたけど休みます。疲れが溜まっているんで。

――プロレス参戦の経緯は?

 僕のスポンサーのブシロードがプロレスの大会を企画してると聞いて『僕もぜひ出たい』と立候補したんですね。ほんまはね、3月のK−1MAXが終わって、5月のプロレスと思ってたんですけど、MAXが3月になかったんでプロレスが初戦になったんですよ。

――MAXの日程が出ず、日本人K−1選手のほとんどがキックの大会に出場する中で長島選手だけはプロレスを選んだ。これは意表を突かれて、長島選手らしいなあと

 でしょ?(笑) 格闘家で超有名選手といえば魔裟斗さん、KIDさん、須藤元気さん。僕はどっちかといえば頭で作戦を考える須藤さんタイプだと思うんです(笑)。(大みそかに)青木真也を倒して『次に何をするんだ?』という一番の売り時にプロレスに参戦するからこそプロレス自体に注目が集まるし、実際にテレビでゴールデンだし。

――えっ、ゴールデンですか?

 生放送がニコニコで、MXは何日か後にゴールデンで放送です。※大会はニコニコ動画で生中継(有料)。また5月14日(土)20:30〜「ブシロードレスリング」TOKYO MXにて放送決定!

――凄いですね

 プロレスをやることでいろいろと言われるんですけど(苦笑)。アマチュアやったら強さだけを考えていればいいんですけど、プロやったらチケットを売るなり、大会の価値を上げるのは知名度の高い選手じゃないですか。そこを強化したいっていうのがあったので中継が決まるのはうれしいですね。

――今回の参戦理由をブログでは「僕はその他大勢は嫌なのです」と

 オンリーワン、ですよね。オンリーワンがナンバーワンになれたら一番いいですけど。まあナンバーワンにはなったんで、日本ですけど。

――今回のプロレスデビューは反響も大きかったですね

 そうですね。東スポさんとかによく取り上げてもらってますし、週プロさん、スポナビさん、K−1とはメディア露出が全然違いますよ(笑)。逆に『K−1に出た時にもこんなに出えへんのにな』ってショックな気持ちもありましたけど(苦笑)。でも、僕が出るだけですごいニュースになってその扱われ方は『K−1ファイターの自演乙』ですから。これが仮に『キックの大会に出ます』だとニュースとしては上がらなくて、格闘技好きの人以外は知らないですよね。だから僕がプロレスに参戦することでK−1のプロモーションもしているんですよ。

――K−1が再開しない以上、誰かが世間に「K−1」をアピールする必要がありますね

 そうなんですよ、プロモーションの意味を分からない人が多いですよ(苦笑)。よく『テレビに出るな』と僕を叩く人がいますけど、僕がテレビに出る時は『K−1ファイター』ですから。僕が出なかったらいつメディアにK−1の名前が出るんですか? しかも今回はTBS以外のMX、地上波ですから。

「自演乙のプロレス」のイメージとは?

K-1時代から体重10キロ増量でプロレスラーへ肉体改造中 【t.SAKUMA】

――しかし体がデカくなりましたね。相当パワーアップもしたとか

 上がりましたね。実感あります。実際、練習で100キロぐらいの子ならボディースラムはやってますからね。最初は全然上がらなかったんですけど、コツを覚えたのもありますけど自分のパワーも付いてますから。

――練習をやってみていかがですか?

 痛い!(苦笑) 練習して、肉を付ける重要性が分かりました。それで体を大きくしたのもありますけど、大きい方が何よりも説得力があるじゃないですか。周りの皆が体が大きいのに、僕だけショボーンとちっちゃくて、細かったら。

――大会ではベテラン選手たちが前座で、デビュー戦の長島選手がメーン。ハードルは相当に高いですね

 めっちゃプレッシャーですよ!(苦笑) エグいっすよ、なんで大谷(晋二郎)さんの後なんやろと思いますよ(苦笑)。ただ、そのプレッシャーは今まで自分がコスプレしてメディアに出た時のプレッシャーと似てるかもしれないです。結局『コスプレしたら絶対にいい試合せなあかん、絶対に負けられへん』っていうプレッシャーがありましたし。K−1の時も内心『やべえ、自分、めっちゃ生意気なこと言ってる』って思いながらめっちゃプレッシャー掛かってました(苦笑)。今回はそれと同じ“ハイリスク、ハイリターン”っていうヤツですよね。誰も歩かない道だから結果的にそうなるんでしょうね。

――ただ、長島選手のエンターテインメント志向はK−1よりもむしろプロレスの方が合っているということはないですか?

 言うたら僕は『プロレス脳』ですよね。プロレス脳を格闘技に持ってきたんで、格闘技では『異色感』というのがあったんですけど、プロレス脳をまんまプロレスでやっちゃうとどうなるんやろうなーって。そこは若干怖いっていう気持ちもありますけど。
 ただ、僕個人としたらこの1戦でしっかりとしたプロレスを見せないと、っていう感じですよ。『僕しかやらないようなプロレス』を作り上げていかなければニーズは生まれないと思うんで。誰でもできるようなプロレスをやっちゃったら、ベテランプロレスラーは一杯いはりますんで。必要とされんかったら出る舞台がないだけですよね。

――新しいことをするのが好きですよね?

 好きです。二番煎じは嫌いです。誰かが敷いたレールで一番になるのも、それは考え方ですからいいんですけどね。今は自由にやってるのが楽しいですよね。練習しながらどこまで通用するのかなって考えて。

――「自演乙のプロレス」のイメージはもうできているんですか?

 ベースの部分はありますけど、もっと肉付けしていかないと難しいですね。……(しばし沈黙)自分で『今までにないもの』を作り上げていくしかないんですけど難しいですね(苦笑)。一つ、入場は今までにない、豪華な入場になりますね。ただ入場ももうちょっと肉付けしないといけないんで。

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著者プロフィール

94年から週刊の情報誌でスポーツページを編集。野球、サッカー、NBA、テニス、F-1など様々な競技や選手を取材。96年からフリーに。99~02年「ゴング格闘技」編集ライター。現在は格闘技、お笑い、教育、健康、舞台・テレビ、政治・時事などを幅広く取材・執筆中。

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