Ｕ−１５時代に全国制覇を経験したメンバーが多くそろう名古屋Ｕ１８は、開幕戦こそ福岡Ｕ−１８の前に１−２の逆転負けを喫したが、能力の高い選手を擁し、優勝候補の一角であることは間違いない。
　売りは高原幹と北川柊斗の２トップ。共にオフ・ザ・ボールの動きとドリブル突破に長けた前線のデュオがバリエーション豊富な動きでゴールに迫る。正確なミドルパスとサイドチェンジを操る水野泰輔、出足の早さを生かした鋭い体の寄せとボール奪取能力を誇る奥山政幸のダブルボランチ、最終ラインの要である１９０センチの大型センターバック、ハーフナー・ニッキと、センターラインがしっかりしているのが強み。後半に運動量が落ちてしまう部分だけケアできれば、相手にとって非常に戦いにくい相手となるだろう。

　福岡は１トップの三苫元太の出来がチームを大きく左右する。名古屋戦では、前半に孤立してしまい、チームは大きく停滞した。しかし、後半「もっとダイナミックに、アクションを大きくしてボールを呼び込んだ」（三苫）と、後半から投入された期待の中学３年生・中島賢星と連動し、鋭いカウンターを引き出して逆転勝利に導いた。ボランチの牛ノ濱容、ＤＦ倉富裕也と各ポジションに核となる選手がおり、この勝利で波に乗れるかに注目したい。

　東福岡と富山第一、広島観音の高校勢はどうか。東福岡は昨年のメンバーから主軸がごっそりと抜けたが、伝統になっている４−３−３のスピードアタックは今年も健在。エースストライカーの横山大樹、左アタッカーのレフティー・八坂翔吾と、セカンドストライカー・白井優登、アンカーの上田拳太郎、そしてキックのうまいＧＫ渕上隼人と、東福岡のサッカーを展開するタレントが核となっており、『赤い彗星』の名に恥じない攻撃力を持ったチームとなっている。

　その東福岡に開幕戦で０−１と敗れた富山第一も、ＦＷ川西翔吾、ＭＦ石黒寛人、ボランチの藤城奨平というスピードある選手をアタッカー陣に擁し、こちらも伝統となっている縦に速い攻撃サッカーができる土台をそろえている。今年のチームの特長は守備力だ。大型の山崎海、対人に強い村上雅人の両センターバックコンビと、高い守備能力を誇るボランチの成田卓朗、スーパーセーブを見せるＧＫ井田裕也がおり、抜群の安定感を見せる。この守備が強豪相手にどこまで機能するかが、勝ち残るポイントとなる。

　今リーグ東西合わせて唯一の公立高校となった広島観音は３月、現在の自主的なスタイルを築き上げた畑喜美夫監督が離任。急きょヘッドコーチだった出木谷浩治氏が新監督に就任した。チームに衝撃が走ったが、畑氏はこれからもスーパーバイザーとしてサッカー部にかかわることになり、選手は落ち着きを取り戻している。
　チームは、昨年は１年生ながらセンターバックとして活躍した塚川孝輝を２シャドーの一角にコンバート。ボランチの鉄田悠貴、ＤＦ稲田雄治のセンターラインを軸に、まとまりのあるサッカーを展開する。開幕戦こそ広島ユースに２−４で敗れたが、すぐに立て直してくるだろう。

　これからどんどん熱い戦いを見せてくれるであろう高円宮杯Ｕ−１８サッカーリーグ２０１１プレミアリーグ。ユースvs.高校の図式を楽しむもよし、ユース同士、高校同士の意地のぶつかり合いを見るもよし、お気に入りの選手を追いかけるのもよし。楽しみ方は三者三様。大事なのは現場に足を運んで生で熱き戦いを見ることだ。ぜひ、全国各地で繰り広げられるハイレベルな戦いを、その目でしっかりと見てほしい。そうすることが、この年代の底上げにもつながり、日本サッカー界の将来にもつながるのだ。

＜了＞

“高校サッカーの聖地”と聞いてまず思い浮かべるのは国立競技場だろう。しかし、その場所にたどり着けるのは、ほんの一握り。多くの選手が志半ばで行く手を阻まれる。そう簡単に到達できないからこそ、特別な場所となり得るのだろう。
　だが、高校サッカーを経験した人には、国立とは別に“もうひとつの聖地”がある。そしてそれはもっと身近なもので、原点とも呼ぶべき場所だ。

　本書に登場する細貝萌（アウクスブルク）にとっての聖地は群馬・敷島運動公園サッカー・ラグビー場。「そこでの経験、すべてが宝物。絶望から何度も救ってくれた」と細貝は語る。兵庫・神戸ウイングスタジアムを聖地として挙げた岡崎慎司（シュツットガルト）も「全国大会は『チャレンジタイム』。県決勝にこそすべてが凝縮されている」と特別な場所への思いを明かしている。
　そのほか宮市亮や田中達也ら日本を代表する選手の聖地を紹介。彼らにとって聖地はどのような存在で、どのような経験を得た場所なのか？　今、それが明らかになる。