“あきらめないプレー”で笑顔をもたらした球児たち=第83回選抜高校野球大会・総括

松倉雄太

甲子園を席巻した東海大相模の打撃

投手陣をリードし、4番としても大会通算13打点を挙げた東海大相模の佐藤(右) 【写真は共同】

 第83回選抜高校野球大会は、東日本大震災の傷跡が癒えぬまま開幕したが、1日の順延もなく、また大会がストップすることなく3日に無事閉幕した。
 11年ぶり2回目の優勝を飾った東海大相模高(神奈川)。チームの大会通算安打74、大会通算塁打113と打撃の大会記録を2つも更新。2番を任された臼田哲也(3年)は、九州国際大付高(福岡)の高城俊人(3年)とともに12安打を放って大会タイ記録となった。ほかにもチーム打率4割、4番・佐藤大貢(3年)の13打点と、打撃面の成績を挙げだしたら枚挙にいとまがない。
 昨夏敗れた興南高(沖縄)からヒントを得たという打撃に、東海大相模高独自のアレンジを加えて、甲子園を席巻した。

 投手陣は初戦で2年生の庄司拓哉、2回戦で長田竜斗(3年)と、ともに現チームの公式戦で一度も登板がなかった2人が先発。不安定な立ち上がりながら、バックのサポートで失点を最小限にとどめることができた。エースの近藤正崇(3年)は冬場に手術した左足の状態が懸念されたが、マウンドに上がると何の問題もなし。門馬敬治監督は口には出さなかったが、日本一厳しいことで知られる“夏の神奈川大会”のような投手起用の仕方をし、それが見事に当たった。
 5試合で失策は1。遊撃手の橋本拓磨(3年)や俊足ぞろいの外野陣は対戦校の打撃を意気消沈させていた。

全国制覇の潜在能力を秘める九州国際大付

 準優勝の九州国際大付高は、エース三好匠(3年)が5試合すべてに完投し、618球を投げた。球速は140キロが最高だが、球を速く見せる技術、そしてキレのあるスライダーなどで決勝以外はほぼ完ぺきなピッチングだったように思える。捕手の高城とともに、2年生ばかりの内野陣をしっかりと引っ張った。
 打線は初戦の4本塁打など、大会通算で6発を放り込んだ。積極的な走塁などは東海大相模高に通じるものもあり、チームの完成度を高めれば、全国制覇できるだけの潜在能力があることをこの選抜で見せたと言えよう。

 ベスト4に終わった神宮王者の日大三高(東京)。エースの吉永健太朗(3年)は、初戦の明徳義塾高(高知)戦こそ苦しんだが、2回戦以降は尻上がりに良くなった。準決勝の九州国際大付高戦では完敗だったが、自慢の打撃陣も甲子園で存在感を見せつけた。秋春連覇ができなかったのは、少しだけ勝利の運がなかったということになるだろう。

 同じく4強の履正社高(大阪)は、エース飯塚孝史(3年)が大会直前に左肩甲骨下付近を痛めるアクシデント。不安を抱えるなか、1回戦で総合技術高(広島)を完封した渡辺真也(3年)が台頭したのは明るい材料だった。捕手・坂本誠志郎(3年)の巧みなリードや、海部大斗、石井元(ともに3年)といった攻守の中心選手がしっかりと引っ張った。

1/2ページ

著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント