テニスコートから届いたサポート=ウォズニアッキ、ジョコビッチが示した日本への思い

内田暁

ジョコビッチは連日メッセージを発信

ソックスに書かれた「JAPAN」の文字。ジョコビッチは連日メッセージを発信した 【Getty Images】

 女子で優勝したウォズニアッキ同様、男子優勝者のノバック・ジョコビッチ(セルビア)も、連日のように日本サポートのメッセージを発信していたテニス選手だ。地震の3日後に行われた試合で彼は、ヒザに貼ったテーピングに「サポート・ジャパン」の文字を書いてコートに立っていた。

「僕が今回やったことは、本当に小さなことだと分かっています。それでも日本の方々に、『あなたたちは一人ではない。世界中が助けようとしている』ということを知ってもらいたかったんだ」
 普段はひょうきん者として知られるジョコビッチが、表情を引き締め、そう口にする。
 彼のメッセージ発信は、その後も連日のように行われた。

 ある時は、片側のソックスに「JAPAN」の文字、反対側のソックスにハートマークを描くという形で意思表示。さらに準決勝の試合中は、ジョコビッチのファミリーボックスの前に、黄色い折り鶴が並べられていた。スタッフの娘が折り紙を習っていたために、折り鶴が平和の象徴だということを知った上での行動だった。

 折り紙……というセンシティブな手法が照れくさかったのだろうか、それとも、異国文化を用いての意思表示にどこか自信が無かったのだろうか。折り鶴について聞いてみると、ジョコビッチは顔を赤く染めほほ笑みながら、「僕のスタッフのアイデアなんだ。大切なことは、継続的にメッセージを発信し続けることだと思って」と真意を語ってくれた。

シャラポワ、ナダル……次々と支援表明をする選手たち

 もちろん、日本への支援を表明してくれているのは、ウォズニアッキやジョコビッチだけではない。両親がチェルノブイリ原発事故から逃れるため移住し、事故の翌年に生を受けたマリア・シャラポワ(ロシア)。民族紛争最中のセルビアで、水を抜いたプールで練習し世界に羽ばたく日を夢見たアナ・イバノビッチ。
 ほかにもラファエル・ナダル(スペイン)やロジャー・フェデラー(スイス)らをはじめ、多くの選手が哀悼の意を表し、チャリティオークションやイベント実現のため力を貸してくれていると聞く。様々な環境で生まれ育ち、世界中のあらゆる土地を訪れ種々雑多な文化や人々に触れてきた彼、彼女たちだからこそ、悲しみの共有は深く、復興への願いは強い。
 
 「世界が、あなたたちのことを思っている」――普段なら、やや面はゆく感じるであろうその言葉が、素直に心に落ちてきた。

<了>

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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