「小野と高原」黄金コンビが輝く日まで
清水のファンが実現を望んでいた「小野・高原コンビ」
小野と高原がそろった今季の清水。大幅に変更したチームはどうなるか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
清水エスパルスは、2010年シーズンをもって、6年間チームを指揮してきた長谷川健太氏が退任し、多くの選手がチームを去った。それに伴い、今シーズンはイラン代表前監督で国際経験豊富なアフシン・ゴトビ氏を招へいし、新しいスタートを切ることになった。
しかし、戦力的な評価としては、今シーズンは大幅なダウンになることは否めない。2010年のリーグ最終戦の時点で32人いた登録選手が、今季は29人に減少。しかも、同年のリーグ戦に30試合以上出場していた主力選手6人(ヨンセン、岡崎慎司、藤本淳吾、兵働昭弘、本田拓也、西部洋平)に加え、クラブ生え抜きの市川大祐、伊東輝悦までもが退団した。さらに、他クラブへの期限付き移籍選手なども含めると、総勢13選手がチームを去った。これにより在籍選手の平均年俸は大幅に下がったが、平均年齢や経験値も極端に下がった。そうなった以上、今季、苦戦を強いられるのは避けられないだろう。
その中で、強化部はできる限りの補強を行った。中でも地元出身選手を積極的に獲得。藤枝東出身の村松太輔、清水商業出身の小林大吾。そして、清水東出身の高原である。特に、この高原の獲得に関しては旧友、小野との共存に大きな期待を寄せている。
小野と高原は小学生のころからお互いの存在を認める仲。そして、「小野・高原コンビ」といえば、1994年のU−16アジア選手権・カタール大会の優勝メンバーであり、99年のワールドユース(現U−20ワールドカップ)・ナイジェリア大会準優勝時の主力選手である。日本のサッカー史上で最も輝いた時代、成績を収めた主力選手たちだ。その黄金コンビが今季、清水で再会し、同じオレンジ色のユニホームに袖を通す。
新体制会見時に竹内康人新社長が高原を紹介した際にも、「小野君、高原君、2人のホットラインが、エスパルスの勝利に結びつくと確信しています」と語ったように、かつて日本サッカー史に偉大な記録を打ち立てた黄金コンビに、多くのファンが期待を寄せている。そして、それはチームの指揮を執るゴトビ監督も同じ。今シーズンのキャプテンに小野、副キャプテンに高原(とボスナー)を指名した。このことからも、2人に対する期待値がいかに大きいかが伝わってくる。
好調の小野に対して高原はいまだノーゴール
これまでに行われた対外試合で小野は、多彩なゲームメークだけでなく、すでに2ゴールを挙げるなど好調さを示している。反面、1トップに入る相棒の高原は、老練な動きから前線でボールを引き出し起点となるなど献身的な動きは見せているが、まだゴールという結果が生まれていない。チームに加入して1カ月ということや、ゴトビ監督の掲げるサッカーが新チームに浸透するのに時間がかかっていることもあり、高原がペナルティーエリアの中でボールを受けてシュートを放つというシーンは、まだまだ少ない。
「だいぶボールは受けられるようになってきているので、あとはシュートまでしっかり持っていく形を自分としては作りたい。でも、受けてさばいてというところの仕事も多い」(高原)
本人もゴールがないことは十分に認識しているし、ゴトビ監督はサイドからの攻撃を徹底させていることもあり、中央にポジションを取る高原は味方のためにスペースを作る動きや、相手DFを引きつけるおとりのような動きが求められているのも事実。そのため、小野から直接スルーパスを受けてシュートというようなシーンはまだ見られない。