ソチ五輪・金メダルへ続く進化=スピードスケート長島圭一郎インタビュー

高野祐太

「10の力で11の効果」の滑りを目指して

五輪直後の今シーズンから新しい技術に取り組んでいる長島 【Getty Images】

――そのプラスアルファの力強さについて、ある専門家にお聞きすると、「長島は8の力で9の効果を出す滑りができる。それは10の力で9の滑りしかできない選手に対して、大きく優れている。それを、10の力を出しても無駄なく11の効果まで出る滑りに結びつけばさらに進化させられる。あの滑りは、その芽生えかもしれない」とおっしゃっていました

 分かります。普段8くらいの力で9とか10の結果が出ている感じはあります。よく見ているなと思います。500メートルというのはミスをいかに少なくするか(が大事な種目)なので、8の力で10というのは意識して、というか自然にできています。そして今は、バンクーバーのときみたいな、10、全力で行って11や12を常に出せるテクニックが作れたらと考えています。そしたら(世界の中で)頭1つ抜けるので。でも、それが何かはまだまったく分からないですけど。

――力まないこととも関係しますか

 いや、力んでもいいと思うんです。緊張してもいいし、頭が真っ白になっても、どんな状態でも10を超えるという。

――確固たる技術があれば、それでもできてしまう

 そう。自信だったりがあれば。

――それを探していると

 そうですね。

さらなるフォームの進化へ

――今季のW杯帯広大会では、「脚の全体を前に持って行くことを試している」というようにおっしゃっていました

 スケートをほんのわずかなんですけど前に置く、という微妙な話ではあります。すると、少し(余計に)長く(スケートに)乗っていられるかなーと思って。

――そんなふうに思いついたことを試している日々だと。これはもしかしたら1回捨てるかもしれないし、あるとき思い出すかもしれないし

 これが、どこかに、別の技術につながるかもしれないし。そういういろんなことが頭の中を駆け巡っていますね。

――帯広大会では「試すことがあって、考え過ぎていい動きができなかった」とも話していました。まずは考える作業からやっている訳ですか

 はい。だから動きが丁寧だったり、悪くても仕方ないと思うんです。ただ、考えてから感覚に置き換えるというんじゃないんですよ。頭の中では考えると同時に感覚に置き換えているというか、考えるイコール感覚にすることなんです。もう頭の中で滑っています。

――W杯の勝ち星というのは気にしますか。現在、500メートルで9勝ですが

 気にしていたら、もっと全部の大会に挑戦していると思います。そしたら10勝以上はしているはず。でもそこに価値観を持っていないので。

――代表の大会で、高木美帆選手(帯広南商高)と仲良くしている場面を多く見かけます

 はい。でも彼女だけじゃなく、メンバーみんなのチームワークがいいですよ。美帆ちゃんだけって訳じゃないです。そこまで女の子に気を遣ってもいられないですから(笑)。

――アドバイスなんかはしてあげているんですか

 基本的に、聞かれたらしますけど、自分からっていうのは絶対ないです。アドバイスするからには、ちゃんと、ずっと見ていなければなりませんから。無責任なことは言えないと思っています。

――冬季アジア大会の抱負は

 アジアは韓国とかレベルが高いので、日本代表として頑張ります。

<了>

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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