個の力で劣勢も、質を保った広島皆実の堅守速攻=<2回戦 広島皆実(広島) 0−2 青森山田(青森)>
精度の高いカウンターで優勝候補に対抗
2失点こそ喫したものの、森重(写真)を中心とした守備陣は最後まで大崩れすることはなかった 【松岡健三郎】
広島皆実の狙いは、伝統である精度の高い堅守速攻を仕掛けること。堅守速攻と言っても、単純にべた引きで奪ってからのロングボールではない。そこには明確な狙いがあった。森重瑞紀を軸にしたディフェンスラインがラインコントロールをし、キープ力と展開力に長けた前田裕介と桂大晴のダブルボランチが絶妙な距離感を保って、プレスの急先鋒(せんぽう)とカウンターの起点としてのポジショニングを取る。FWと両サイドは「相手の右サイドバックの横濱充俊が攻撃的なので、その裏と、センターバックのギャップを狙った」(藤井潔監督)。
広島皆実が繰り出したカウンターは、どれも精度が高かった。象徴的だったのは、12分と24分のシーン。12分、中盤で渡大生がボールを拾うと、すかさずDFとサイドバックの間に走り込んだFW香山洸哉へロングスルーパス。香山がチャンスを迎えるが、放ったシュートは威力が足りなかった。24分には中央でボールを受けた桂が一気に縦に走り出した渡にクサビを打ち込むと、同様に縦に走り出したFW大武弘直に、DFを引き付けてから縦パス。大武は中央突破すると見せかけて、左サイドのスペースを突いたMF浜田翔へとつなぐ。浜田のクロスに詰めたのは、カウンターの起点となった桂。放ったシュートは枠をとらえられなかったが、カウンターに4人がかかわり、フィニッシュは起点となった選手が迎える。このシーンに代表されるように、広島皆実は繊細なラインコントロールと、全員が前への意識を持った思い切りの良いカウンターで、個の能力で上回る青森山田を相手にチャンスを作った。
強烈な個の前に失点も、自らのサッカーを貫く
渡(白14番)などタレントはそろっており、チームとしての質も高かっただけに2回戦敗退は惜しい結果となった 【松岡健三郎】
そして28分、「サイドから柴崎にボールが入った時、ラインを上げてコンパクトにしようとした」(森重)瞬間、柴崎からは意表を突くループパスが、最終ラインの裏に供給された。そこに走り込んだのは三田。GKを軽やかにかわして、無人のゴールに流し込んだ。
柴崎岳という強烈な個と、それに連動する質の高い個の共演の前に、広島皆実は2点を失った。80分間を通して、この瞬間だけが青森山田にとってのビッグチャンスだった。
2失点後も広島皆実は気落ちすることなく、堅守と速攻を続けた。カウンターを仕掛けながらも、特筆すべきは帰陣の早さ。ボールを奪ってからの守から攻への切り替えはもちろん、ボールを奪われてからの攻から守への切り替えも早く、2点を奪って、ポゼッションを高めながら、攻撃に出た相手の裏を突いて決定的な3点目を奪いたい青森山田の思惑をかわした。
だが、さすが青森山田というべきか。広島皆実の精度の高いカウンターにも、大会ナンバーワンGK櫛引政敏を軸にした守備陣が粘りの対応を見せた。それでも73分には、渡からの絶妙なループパスに、ディフェンスラインの裏に抜けた交代出場のFW宮原崇晃が絶妙なトラップで飛び出してきたGK櫛引をかわす。無人のゴールに決めるだけだったが、角度がきつく、シュートは枠を外れてしまった。
このチャンスが決まっていれば、試合の流れからすると、結果は分からなくなっていただろう。冒頭でも書いたが、この試合はそう思える内容だった。
0−2。広島皆実は初戦敗退に終わった。しかし、彼らの見せたサッカーは非常に質が高く、初戦で消えてしまうのがもったいないと思える好チームだった。あらためて、この試合が2回戦屈指の好カードであることを、実証してくれた。
<了>
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