鹿島学園、中央を固めたが故の“副作用”=<2回戦 滝川第二(兵庫) 4−1 鹿島学園(茨城)>

安藤隆人

序盤は鹿島学園の堅守が機能

この日、2得点を挙げた滝川第二の浜口 【松岡健三郎】

 鹿島学園の特徴は中央に築く強固なブロックによるディフェンスと、そこから繰り出されるカウンター。長石一真と小野健太の両センターバックと、ボランチの大黒柱MF請川順也を中心に、中央に強固な壁を築いた。しかし、その壁は時間が経つとともに下がりだし、強固さは変わらなかったが、サイドを有効活用されるという“副作用”を起こしてしまった――。

 滝川第二はMF谷口智紀が出場停止から復帰し、彼本来のポジションであるボランチに入るかと思われたが、1回戦で谷口の出場停止を受けてボランチに入ったFW樋口寛規をそのまま置き、谷口をFWに置いた。180センチの高さを誇る谷口を前線に起用してポイントを作ったことで、鹿島学園はマークがつかめず、立ち上がりに混乱したため、滝川第二は開始早々に試合を動かすことができた。

 2分に右のスローインから、サイドバックの濱田量也が仕掛けた後のこぼれを、白岩涼が決めて、滝川第二が先制に成功する。しかし、鹿島学園もすぐに修正を施すと、8分に左サイドを突破した近藤直幸のクロスからゴール前で密集となり、最後は石倉央基が見事な突破から決めて、同点に追いついた。

 ここから試合はこう着状態になった。1−1になり、「選手たちが状況を考えて、谷口と樋口のポジションを入れ替えた」と栫裕保監督が語ったように、当初は20分あたりで入れ替えることを考えていたが、相手のカウンターを警戒し、谷口をボランチに戻して、運動量豊富なMF香川勇気とのコンビで、守備を引き締めることを滝川第二の選手たちは判断した。

 逆にこれで前線のポイントがなくなったため、鹿島学園は守備がしやすい状況になった。樋口と浜口の2トップをセンターバックとボランチでうまく挟み込んで、自由を奪っていく。そしてボールを奪ったら、カウンターを仕掛け、得意のセットプレーに持ち込んでゴールを狙う。
 14分にはFKから近藤がどんぴしゃのヘディングシュートを放つが、これは滝川第二のGK中尾優輝矢のファインセーブに阻まれた。これで得たCKから、再び近藤が強烈なボレーを放つが、これは相手DFの足に当たり、バーに嫌われた。

鹿島学園の守備に穴をあけた滝川第二のクサビ

後半は白岩(写真)らサイドアタッカーが躍動した 【松岡健三郎】

 鹿島学園の試合運びは悪くはなかった。だが、徐々に滝川第二が試合のペースをつかんでいった。25分を過ぎると、滝川第二はブロックで固めた中央に、執拗(しつよう)なまでにクサビを打ち込んできた。それに対し、鹿島学園の守備は最初はクサビのボールをはじけていたが、徐々にラインが下がりだし、サイドが空いてしまった。こうなると、滝川第二自慢のサイドアタッカー陣が活性化されていく。

 右の本城信晴、左の白岩のサイドアタッカーと、右サイドバック濱田のドリブラーが、空いてきたスペースを果敢に突くと、試合のリズムは滝川第二の方へ。59分、白岩の突破からバイタルエリアに飛び出してきた谷口へつなぐと、谷口の仕掛けにDFが食いついた瞬間、これまで機能していた樋口と浜口へのマークが外れてしまう。そのすきを見逃さなかった谷口は、樋口へクサビを打ち込むと、樋口が反転してシュート。GKに一度は止められるが、こぼれ球を浜口が詰めて、ついに勝ち越しに成功する。

 続く66分には右サイドを本城、濱田のコンビで切り崩し、濱田のセンタリングが相手のハンドを誘いPKを獲得。樋口が決めて、3−1。これで勝負は決した。「2人で点を取れば負けることはない」と樋口が語ったように、完全に流れをつかんだ滝川第二は、78分に浜口がとどめの4点目を決めて、そのままタイムアップ。

 鹿島学園の長所は出ていた。しかし、滝川第二の執拗な中央への仕掛けが、結果として鹿島学園のサイドを空けさせ、滝川第二も長所を引き出すことができた。中央を固めたが故の“副作用”。逆に言えば、滝川第二のしたたかさ、攻撃の破壊力のすさまじさが、はっきりと出た試合だった。

<了>
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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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