「欧州vs.南米の図式はそろそろ覆される」=北澤豪氏が予想するクラブW杯の展望<後編>

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パチューカの一番の見どころは中盤

ベニテス(写真)とマンソが絡むパチューカの中盤は見どころ満載だ 【写真:アフロ】

――欧州や南米とその他の大陸では、レベル差はやはりまだあると思われます。その中で彼らに次ぐ勢力としてはどのチームが挙げられるでしょうか?

 北中米のメキシコなんかは優秀な選手が海外に出て成功していることも多くなっているし、欧州や南米に対抗できる大陸になっていると思います。今回出場するパチューカはトップチームもある程度の力を持っていますけど、下部組織も世界的な力を持っているんです。
 今年のダノンネーションズカップ(編注:10歳から12歳までの小学生年代である少年・少女が出場する、FIFA公認U−12の世界一を決める国際サッカー大会)でメキシコ代表として出場したのがパチューカの下部組織だったんです。結果的にメキシコが優勝するんですけど、ブラジル人もパチューカが出てきたならしょうがないって言うんですね。それだけ育成面では南米や北中米の中で一目置かれているということです。実際レベルも高い。冷静ですし、大人顔負けのプレーもします。ポジショニングや技術、体の使い方の指導もしっかりできている。

――今大会では欧州や南米に次ぐ、もしくは両雄を食うぐらいの力がパチューカにはありそうだと

 その可能性はあると思います。クラブ全体で見た時にはトップチームはまだ絶対的な存在ではないですけど、世界からも一目置かれている地域であることは間違いない。昔はメキシコの選手が海外に出ることは少なかった。でも、90年代からは増えてきていますよね。世界でも通用するから欧州の国が獲得しようと思うわけですよ。

――パチューカの見どころとしてはどういった部分が挙げられますか?

 一番の見どころは中盤です。僕の好きなアルバレスは移籍してしまったけど、ベニテスと2008年のクラブW杯にリガ・デ・キト(エクアドル)のメンバーとしてプレーしたマンソが絡んだ時は面白いですよ。日本人が好きなサッカーだと思います。

城南はインテル相手でも真っ向勝負を仕掛けるのでは

選手全員のハードワークが持ち味の城南一和(黄色)。大会に波乱を巻き起こすことはできるか 【写真:アフロ】

――アフリカのマゼンベは2大会連続の出場となります

 マゼンベは……正直よく分かりません(笑)。ただ今回はムプトゥがいないんですよね(編注:審判への暴行で1年間の出場停止)。彼はアーセナルが獲得を狙うという話があったくらいの選手です。
 アフリカチャンピオンズリーグの決勝で5−0と圧勝したり爆発力はあるんですけど、単純なミスが多い。アフリカを2年連続で制すくらいだから力はあるんでしょうけど、まだその強さが何であるのか、僕自身つかめていないところが多いですね。ただ、個人の力は古き良きアフリカのにおいがします。一言で言うと個の力です(笑)。逆に最先端のシステムでは収まりきらないスケールなのかもしれないですね。

――アジア代表は2大会連続で韓国勢です。城南一和の特徴はどういったものでしょう?

 チームとしてのまとまりに関しては、城南はインテルを凌駕(りょうが)しているかもしれません。なんかやりそうだなという期待はありますね。
 中心は元コロンビア代表のモリーナです。オーストラリア人のキャプテン、オグネノフスキが精神的な支柱になっていますね。監督のシン・テヨンは僕が現役のころ、対戦しています。
 中盤には戦える韓国人選手がそろっています。あと、チェ・ドンゴンというFWは、後方からのくさびのパスがきちんと収まる。彼のようなストライカーは日本にはいないですね。韓国のチームはどんどんくさびのパスを出してくる。パスの優先順位はとにかく前なんですね。それに耐えられるパワーを持っているのが日本と韓国の違い。日本の方が中盤に良い選手がいるけど、ゴールを奪うという目的は果たせていないのかなと思います。韓国は下の世代でもとにかく前に入れてくるんですね。
 もちろん日本はまねする必要はないんです。スペインのように後ろからしっかりビルドアップしてという形でもいいんですけど、結局今回も出場できない日本としては韓国のスタイルを認めるしかないんですよね。
 アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝でもそうでしたけど、韓国のチームはハードワークができます。コンパクトにやろうとしている部分もあるし、前と後ろが明確に保たれています。中盤がパスもつなげるようになっているから、まとまりもすごいあるように見える。

――城南は1つ勝てば準決勝でインテルとの対戦になります。欧州王者とも良い勝負が期待できそうですか?

 彼らは引かないんですよね。W杯・南アフリカ大会でも韓国はアルゼンチンと対戦した時、真っ向勝負をしましたよね(1−4で敗戦)。あれがすごいなと思います。戦略を持って引くことも1つの手だと思いますけど、今の韓国なら真っ向勝負してもいけるんじゃないかという気持ちがあったから勝負したわけですよ。城南もインテルの今の状況を考えたら真っ向勝負を仕掛けるんじゃないですかね。そうすればインテルも慌てる可能性はあります。

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