「欧州王者インテルに絶対的な力はない」=北澤豪氏が予想するクラブW杯の展望<前編>

スポーツナビ

スナイデルはプレーに迷いがない

インテルの攻撃をつかさどるスナイデル(右)。北澤氏は「プレーに迷いがない」と評価する 【Getty Images】

――そのインテルの中心選手はエトーやスナイデルといったW杯・南アフリカ大会で日本と対戦した選手です。彼らのすごさは具体的にどういった点になるのでしょう?

 今の試合数はかなり多いと思うんですよ。ただ、良い選手というのはそのハードな日程の中でどの試合でも何かのきっかけを起こしたり、得点につながるプレーをしていたりする。そういうのはやはりすごいと思いますよ。

――継続的に良いプレーをするということですね

 そう。継続的にある程度のレベルを保つというのはなかなか難しい。より力を使わないとできないことですし、試合数が多いとそれはさらに難しくなります。それでも必ずやる。
 エトーはモリーニョの下で自分の新しいポジションを確立しました。バルセロナの時からいろいろなことを要求されて、それを拒否して放出されてしまいましたけど、モリーニョの指導で多くの役割をこなせるようになった。
 スナイデルもトップ下だけじゃなく、FWの役目も担えるようになりました。彼らのようなエース格の選手が、さまざまなポジションでプレーできるようになったとことは時代の変化ですよね。

――プレー面に関してはどうでしょう?

 スナイデルに関してはレアル・マドリーの時は確実にポジションを取れたわけじゃないですけど、FKをバンバン決めたり、そういう自己主張みたいなものはすごかった。オランダの小国的な意識なのかは分からないですけど。
 日本と対戦したW杯でも、ああいう決定力や、シュート力だったり、シュートまでの早さとか、シュート前のボールコントロールなんかは物すごくレベルが高かった。
 動きの量も相当多いですね。モリーニョ時代のインテルと今のインテルを交互に見比べているんですけど、スナイデルの動きの範囲は変わっていないんです。オランダ代表と比較してもそんなに変わらないし。代表の方が選手の動きは流動的だから、一番機能はしているのかなとは思います。

――スナイデルは身体能力も高くはないですし、日本人とはどういった点が違うのでしょう?

 特別なことをしているわけではないですし、当たり前のことをよりクオリティー高くやっているだけなんだと思います。ただ、それはなかなかできることではない。あとはプレーに迷いがないなという感じはします。プレーに間がないんですよね。デビュー間もないころはファン・デル・ファールト(現トッテナム)の方が評価が高かった。でもスピードやテンポはスナイデルの方が早いし、トップ下というポジションでの強引さはありますよね。あとはやっぱりモリーニョに評価されたのが大きかったんじゃないかと。動く量が多い上に質も高いという点が評価される理由の1つにもなっているんだと思います。

――戦力値ではやはりインテルが突出していますね

 だけど、粘り強くはないでしょうね。監督と選手の関係や、連勝はあまりないとか、けが人がどこまで回復するかとか、不安要素はたくさんあります。今までの大会の欧州王者のような絶対的な力はないんじゃないですかね。波乱が起きる可能性はかつてないほどあると思います。

アル・ワハダの攻撃はなかなかのもの

アル・ワハダのバイアーノ(左)はスペインリーグで2けた得点を記録した実績を持つブラジル人ストライカー(写真はセルタ所属時のもの) 【Getty Images】

――では、続いて開幕戦で激突するオセアニア代表のヘカリ・ユナイテッドと開催国のアル・ワハダについてお話をうかがいたいと思います。北澤さんは両チームの映像をご覧になりましたか?

 見ましたよ。ヘカリの方は正直、実力的には上に進むのは厳しいと思います。何よりイージーミスが多い。でもフィジカルコンタクトは尋常じゃない強さを持っています。アフターファウルも多いし、今まで出場してきたオセアニアの中では激しさという意味では一番だと思います。組織としてはそんなに成り立っていないですけど、どこまでやれるかという感じです。

――アル・ワハダは開催国として是が非でも初戦は勝ち抜きたいところです

 アル・ワハダはけっこう強いと思いますよ。スペインリーグのセルタで活躍したストライカーのフェルナンド・バイアーノや横浜F・マリノスでプレーした中盤のマグロン(2005年から1年半在籍)といったブラジル人は良い選手です。それに2003年のワールドユース(現U−20W杯)でMVPに輝いたイスマイル・マタルもいますし、攻撃のタレント性はなかなかのものだと思います。

――バイアーノはセルタに在籍した2シーズンで28得点を記録しています

 バイアーノは“ザ・ストライカー”という感じの選手です。両足で強烈なシュートを打てるし、サイドからのクロスに対する入り方もうまい。ヘッドも強いし、スルーパスを受けてトラップしてシュートという形も持っています。彼がチームの得点源ですね。
 アル・ワハダはタレントはいます。ここが開催国としてどれだけ盛り上げてくれるのか楽しみです。

<後編へ続く>

(協力:FIFAクラブワールドカップ事務局)

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