U−21代表、逆境を乗り越えた雑草軍団=アジア大会・金メダルの要因
2年前のAFCU−19選手権での挫折を教訓に
2年前の失敗を繰り返さないよう、チームのムード作りにも苦心した永井 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】
「比嘉(祐介)とか當間(建文)とか永井(謙佑)さんとか、明るい、うるさい選手がいて練習でもプライベートでもみんなが仲良かった。普通であれば数人ずつのグループに分かれるところを、みんなで行動できた。振り返っても楽しかったなって思います」と山村は話す。
実はこの世代には、トラウマがある。それは2年前のAFCU−19選手権。U−20ワールドカップ出場がかかったその大会、日本は8大会ぶりに出場権を逃した。このときのチームはどこか大人しく、まとまりのない雰囲気が漂っていた。不平不満のようなものが外にいるわれわれまで漏れ伝わってきてしまうような状態だった。「あんまり招集されたくないな、っていう声も正直ありました」と明かす選手もいるほどだ。
その大会に参加し、4得点で得点王にもなった永井は言う。
「あの大会の時、僕はお客様のようだった。出場も試合後半からだったし、練習でみんなを引っ張るとか、明るくするとかそういうこともなかった。そうしたら、負けてしまった。だから、それ以降楽しくやることを一番に考えているんです。このチームは雰囲気が良かったのが勝てた理由のひとつでもあると思いますよ」
実際、今大会も永井は得点だけでなく練習の雰囲気作りに一役かった。誰よりも楽しそうに練習に取り組んでいたようにも見えた。そして表彰式後、手書きで「雑草」と書いたシャツを着て記念撮影に臨むところも、最後までムードメーカーであり続けた。エースがエースの仕事に徹するだけではないところが、このチームの強さの秘訣(ひけつ)だったかもしれない。
真価を問われるのは来年の五輪予選
「優勝はしたが、五輪予選のアジア3.5枠は厳しいというのが実感」
だが、この優勝で得た自信は、今後の厳しい戦いで彼らを支えてくれるだろう。五輪予選では、今回とは比べ物にならないほどのプレッシャーがのしかかってくる。厳しい日程を強いられるかもしれないし、メンバーもどこまで招集できるかは未知数だ。だが、そういった逆境に陥っても、雑草魂ではい上がってきたこのチームならば、きっと乗り越えてくれるに違いない。
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