2010年シーズンの終わり、そして始まり=東京ヴェルディの土壇場勝負4(終)
ベテランと若手の融合が未来を感じさせた
J1昇格こそならなかったが、ベテランと若手が融合したチームは豊かな未来を感じさせた 【写真:アフロ】
開幕当初、わたしが公言する東京Vの予想順位は8位だった。うまく事が運んで、ひとけた順位にギリギリ届くかどうか。下手をすれば、下位にズブズブ沈むこともあり得る。今年は新しい経営陣で臨む転換期に位置づけられ(6月末に再度刷新されるのだが)、何があってもじっと我慢だと考えていた。ところが、この予想はものの見事に覆される。東京Vは昇格戦線に食い込み、もしかしたらひょっとしての思いが、やがて輪郭のはっきりした目標に変わった。残念な結果に終わったが、ベテランと若手が融合したチームは豊かな未来を感じさせ、苦境をものともせず立ち向かっていく姿勢に何度も胸を打たれた。最終的に昇格の望みが断たれた一戦もまた、印象深く刻まれている。
11月20日、第35節の福岡戦。前節、東京Vはジェフユナイテッド千葉に敗れ、5位に順位を落としていた。この時、福岡との勝ち点差は7、得失点差はマイナス14。残り3試合、数字上の可能性は残すものの、極めて厳しい状況に追い込まれていた。
先制したのは福岡。21分、久藤清一がPKを決め、リードを奪う。前半、東京Vは決定機を作れないまま終わった。後半、福岡がカウンターアタックでもう一発。50分、城後寿が裏に抜け出し、追加点を入れる。東京Vにとっては致命的な2失点である。だが、ゲームはこのまま終わらなかった。
0−2からの同点劇と非情な結末
残り10分を切り、わたしは目の前で繰り広げられる光景を不思議な思いで見ていた。同時に、この分からなさは貴重だと直感する。一応の説明はつくのだ。勝てば、昇格の可能性がわずかに残る。プロである以上、最後まで力を尽くすのが当然だと川勝監督は言い続けてきた。だが、人は理屈だけで動くものではない。そういった言葉で表せるものから離れた、より根源的な衝動をピッチから感じ取っていた。
夕刻、オレンジ色を帯びる博多の森、レベルファイブスタジアム。後半ロスタイム、FKのチャンスを得た福岡は、高橋泰が矢のような弾道のシュートをゴールネットに突き刺す。突如、ぐわんと空気が揺れ、天空を突き上げる幾多の叫び声。東京Vの選手たちはしばしぼうぜんと立ち尽くし、戦いの終わりを知った。