アルゼンチン対ブラジル、最大の勝者はメッシ

アルゼンチン戦をテストに使ったメネーゼス監督

メネーゼス監督(右)はロナウジーニョといったベテランと、若手を今後も試していくようだ 【写真:アフロ】

 バティスタはブラジル戦で何が起こったのかをよく考えるべきだ。ブラジルのマノ・メネーゼス監督は、メッシのゴールによりロスタイムで敗れた後、試合を冷静に分析している。
「わたしにとっては悪い結果ではなかった。ほぼ引き分けに等しい試合だったからだ。アルゼンチンにはさほど攻め込まれていなかったし、われわれはほとんどがW杯に出場していない選手で占められていたからね」

 ブラジルにとって、アルゼンチン戦は良いテストとなった。メネーゼス監督は今後も選手を試す意向だろう。その中には、今回のチームで最もベテランだった30歳のロナウジーニョ(面白いプレーもあったが、ピークを過ぎていることは明らかだ)や、大きな将来性を感じさせるパト(ミラン)やガンソ(サントス)といった今回は負傷で招集できなかった選手も含まれる。

 ブラジルにとっての大きな問題は、2014年に自国で開催されるW杯まで、メディアなどからの多大なプレッシャーにさらされることだ。前回ホスト国となった1950年大会では、決勝でウルグアイに敗れて優勝を逃した。今回は6度目の世界制覇が義務となる。

選手とファンの距離が遠ざかるブラジル

 母国のメディアは、ブラジルがW杯予選を戦わないことが、逆に大きなプレッシャーになると見ている(開催国のため予選は免除)。南米のほかの9か国と対戦する機会が失われ、代わりにFIFA(国際サッカー連盟)が定める代表マッチデーで親善試合を18試合行うこととなる。これはすべて海外での試合になることが予想され、自国の観客や“トーチダ(ブラジルの熱狂的なファン)”は選手たちをほとんど見る機会がないのだ。

 メネーゼス監督は8月10日に行われた米国との親善試合の前日ミーティングにおいて、ブラジルサッカー連盟(CBF)の会長で、FIFA前会長のジョアン・アベランジェ氏の娘婿であるリカルド・テイシェイラ氏に、今年中にブラジル国内での試合を組むよう求めた。だが、2010年も間もなく終わりを迎えようとしている。今年にブラジル代表が行った12試合はすべて外国での試合で、次の親善試合も来年2月にパリで行われるフランス代表との試合だ。

 もし、ブラジルが選手と自国民の間を遠ざけ続けるのであれば、すべてはアルゼンチンと逆の方向へ動いていくだろう。メッシはカタール滞在の最終日、アルゼンチンで最大発行部数を誇る『クラリン』紙に独占インタビューの機会を与え、「サッカー選手を引退したら、アルゼンチンに戻って生活するつもりだ」と語った。
 南アフリカで苦しみ、ドイツ戦に敗れた日には人目を避けてロッカールームで涙したメッシは今、アルゼンチン代表で自分の居場所を勝ち取り、笑顔を取り戻している。

<了>

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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