28年ぶり快挙の一方で引っ掛かる事=世界バレー女子

田中夕子

日本の勝ち方

21歳の誕生日に迎えたトルコ戦。江畑はチーム最多の24得点を決め、勝利に貢献した 【坂本清】

 では、勝ち方はどうだったか。
 今大会初めての敗戦を喫した中国戦の翌日、日本が対したのはサウスポーエースのネスリハン・ダルネルを擁するトルコ。中国戦と同様に「ネスリハンを意識しすぎた」(荒木)場面もあったが、バタついたのは立ち上がりのみ。トルコのフォーメーションを見て「フェイントやプッシュが有効だと思ったので、序盤から多めに使って様子を見ようと思いながらプレーしていた」と木村が言うように、中国戦とは異なる余裕があった。さらにこの日が21歳の誕生日となった江畑幸子(日立)も、得意と自認する「トスが崩れた場面からのスパイク」が面白いように決まり、1人で24得点をたたき出したのも勝因の1つであるのは間違いない。
 続く韓国戦も、トルコのネスリハンと同様にキム・ヨンギョンという大エースに対し、弱いポイントを的確に突いたサーブで崩し、単調な攻撃になったところをブロックとレシーブの連携から切り返す。前日同様に木村、江畑の両サイドにボールを集めた日本が、常に主導権を握る理想通りの展開で3−0の完勝。勝たなければならない試合できっちりと勝利を収め、28年ぶりのベスト4進出を果たした。

 勝因と敗因を比べて、そこに生じる違いは何か。
 負けた試合の敗因が「ミス」「過剰な意識」「力負け」であったのに対して、勝ち試合の勝因は、「江畑の爆発」「木村の活躍」「サーブ」。敗因に対して、勝因はどうも「個」の要素が目立つように思えてならない。
 江畑が良かった、木村が良かった。勝てば結果オーライで終わってしまう分、潜在する課題が気になり、のど元に小骨が刺さる。
 もどかしさは、選手たちも同じ。荒木、山口が口をそろえて言った。
「ミドルやライトの(攻撃)本数が少なく、サオリとエバ(江畑)に頼り過ぎてしまった。本当に強い相手に対してこういうバレーをしていたら、絶対に勝てないんです」

 13日の準決勝で日本はブラジルと対戦する。8月のワールドグランプリでは9年ぶりに勝利し、真鍋政義監督は「どうすれば日本のリズムになるか、方法は分かっている」と言うが、世界ランク1位の国が数カ月前の敗因を克服していないはずがない。ましてやブラジルにとって、世界選手権の制覇はまさに悲願。結果オーライで勝てるほど、甘い世界ではないことを熟知している。
 28年ぶりの快挙も1つの通過点とするために。ここまで取り組んできた数々の試みの真価を問う意味でも、これ以上の機会はない。

<了>

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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