期待の“Bチーム” サンダー、ブルズの躍進に注目=NBA2010−11シーズン

宮地陽子

世界選手権MVPのデュラント擁するサンダーは足踏みスタート

デュラント擁するサンダーは昨シーズン好調だっただけに、今シーズンは対戦相手から“標的”とされ、厳しい戦いを強いられている 【Getty Images】

「今シーズン序盤戦、あまりいいスタートを切ったとは言えないですよね?」
 11月3日(現地時間)、オクラホマシティ・サンダーが今シーズン全敗中だったロサンゼルス・クリッパーズに大敗し、シーズン成績を2勝2敗とした直後のロッカールームでのこと。冒頭の、質問とも意見ともつかぬリポーターの問いかけに、ケビン・デュラント(オクラホマシティ・サンダー)は、珍しくムっとした表情を見せた。
「2勝2敗、まだシーズンの4試合を戦っただけ。ひどい質問だ」と、デュラントは言い返した。
 確かに2勝2敗は、まだ『悪いスタート』と言うほどの状況ではない。実際、翌4日にはポートランド・トレイルブレイザーズに勝ち、シーズン成績を3勝2敗、昨シーズンとほぼ同じ、勝率6割ペースに戻している。

 とはいえ、デュラントも今シーズンのサンダーに対する周りの目が、昨シーズンまでとは違うことは理解していた。昨シーズン、50勝32敗の成績でレギュラーシーズンを終え、プレーオフ1回戦では、チャンピオンとなる第1シードのロサンゼルス・レーカーズ相手に堂々と戦いを挑んだ。シーズン終盤からプレーオフにかけてのその戦いぶりには、全世界から注目が集まった。若く、伸びしろを感じるチームということもあり、多くの専門家が、今シーズンのウエスタン・カンファレンスでレーカーズに次ぐ強豪になるだろうと予想したほどだ。

 それだけ期待されるチームになった結果、当然ながら、対戦相手から標的とされるようにもなった。
「どのチームも僕らに本気で向かってくる。それは、ここまでを見れば明らかだ」とデュラントは言う。「ここはNBAだ。僕らはそれに応えなくてはいけない」

ブルズのローズ「NBAで最高のチームのひとつになりたい」

ブルズのローズは世界選手権を機に「最高のチームになりたい」と明確な目標を口にするようになった 【Getty Images】

 デュラントはこの夏、チームメートのラッセル・ウェストブルックとともに“Bチーム”と呼ばれた米国代表を率いて、世界選手権(トルコ)で優勝を果たしたのだが、思えば、NBAの中でのサンダーの位置も“Bチーム”だ。プレーオフに出るだけの実力は十分にあるが、優勝候補と言うには一歩足りないチーム。別の言い方をすれば、周りから見るとまだ優勝候補ではないが、自分たちでは優勝できると心から信じ、背伸びをしているチームだ。

 実際、サンダーのヘッドコーチ、スコット・ブルックスに目標を聞くと、「どのチームにとっても目標は優勝すること。今シーズンそれが実現できると宣言しているわけではないが、常に優勝を目標に戦っている」と、優勝以外の具体的な目標を口にしようとはしなかった。

 サンダー以外に、楽しみな“Bチーム”としては、イースタン・カンファレンスのシカゴ・ブルズがあげられる。そのブルズのポイントガード、デリック・ローズは、デュラントやウェストブルックとともに、今夏の世界選手権米国代表の一員でもあった。NBA入りして最初の2シーズンは、実力の割に謙虚で自分を出すことをしなかったローズだが、今シーズンを前に、彼の中でスイッチが入った。

 いわく、「自分の中では、『なぜ自分がリーグMVPになれないのか? なぜリーグ最高の選手になれないのか? なぜこれができないのか?』と思っている」と言うのだ。チームについても、「NBAで最高のチームのひとつになりたい。もう言い訳は何もない」と、優勝を本気で狙う宣言をしている。

 世界の舞台で“Bチーム”として戦った選手たちは、世界選手権優勝という経験によって自信をつけ、一回り大きくなって各チームに戻った。そんな彼らが、どこまで背伸びすることができるのか、それぞれの“Bチーム”を、もう一段上のレベルまで率いることができるのか。

 リーグ頂点の優勝争いとともに、彼らの“背伸び”にも注目だ。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

東京都出身。国際基督教大学教養学部卒。出版社勤務後にアメリカに居を移し、バスケットボール・ライターとしての活動を始める。NBAや国際大会(2002年・2006年の世界選手権、1996年のオリンピックなど)を取材するほか、アメリカで活動する日本人選手の取材も続けている。『Number』『HOOP』『月刊バスケットボール』に連載を持ち、雑誌を中心に執筆活動中。著書に『The Man 〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。現在、ロサンゼルス近郊在住。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント