松永成立が教える優秀なGKの見分け方=目からウロコのGK専門講座
サイドをえぐられたときの川島の状況判断
メッシにサイドをえぐられた際の川島のポジショニングは的確だった 【写真:アフロ】
アルゼンチン戦の川島のプレーでは、メッシのFKをジャンピングセーブではじき出したシーンが印象的だろう。だが、ここでは別のシーンにフォーカスしたい。前半14分、立ち上がりからフルスロットルで仕掛けてきたメッシが、右サイドでダレッサンドロとのワンツーからペナルティーエリアに侵入する。カバーに入った長谷部誠との1対1で爆発的なスピードで縦に持ち出す。「サイドをえぐられた」状況である。
このようなシーンのポジショニングについて松永氏は、「サイドの深い場所までえぐられたら、味方がどれぐらいアプローチに行けているかで判断する」と話している。ここでは、メッシについた長谷部は完全には振り切られずボールに寄せることはできていた。そこで川島はニアポストの前に出てボールと「正対」し、シュートコースを狭めるプレーを選択した。
ゴール前にはアルゼンチン選手が2人入ってきていたので、そこに合わせてくるプレーも考えられた。しかし、川島は味方選手のアプローチ具合からメッシはシュートを打って来ると読み、メッシのシュートを防ぐことに成功した。サイドをえぐられたときの対処法を川島が確実に実行したからこそのプレーだといえるだろう。「素早い反射神経」や「熱いコーチング」がトレードマークの川島だが、冷静な状況判断がセービングを支えていることが分かるシーンだった。
カウンターにつながった西川のパンチング
前田のカウンターを引き出したのは西川の的確なパンチングだった 【写真:アフロ】
アルゼンチン戦の後半終了直線に、前田遼一が自陣から独走してシュートまで持っていったプレーは記憶に新しい。スタンドを大いに沸かせたこのプレーを巻き戻すと、アルゼンチンのCKを西川がパンチングではじいたボールが、前田の前方のスペースに落ちたのが出発点になっていることが分かる。
パンチングではじく場所の優先順位 【(C)ゴールキーパー専門講座】
はじく場所によって、相手にセカンドボールを拾われて二次攻撃を受ける場合もあれば、カウンターでチャンスにつなげられる場合もある。GKの途中出場という、試合に関与しづらい状況で、しっかりとパンチングすることができた西川の状況判断が演出したカウンターだったといえるだろう。
松永氏は言う。
「ポジショニング、コーチング、構え、セービング、パンチング、フィード……、GKの目線から見れば、一つ一つのプレーに狙いがあることが分かってもらえるはずです。ゴールの場面に関しても、GKが止めたかどうかだけでなく、その前のプレーにまで注目して見てもらえらば、より深くサッカーを見ることができるでしょう」
<了>
松永成立(まつなが・しげたつ)
1962年8月12日、静岡県浜松市生まれ。現役時代は日産自動車、横浜マリノスなどでGKとして活躍。日本代表として1993年のFIFAワールドカップ最終予選に出場し、韓国戦のマン・オブ・ザ・マッチを獲得し、最終予選ベスト11に選ばれた。2000年、JSL145試合、Jリーグ174試合、日本代表として国際Aマッチ40試合出場という記録を残して現役引退。引退後は京都パープルサンガのGKコーチに就任、2007年から横浜F・マリノスでGKコーチを務めている。