“格差婚”カップル、夫に訪れたチャンス=NBA

山脇明子

妻は世界を代表するスーパースター

 米プロバスケットボール協会(NBA)、ナゲッツのシェルダン・ウィリアムズと聞いて、ピンと来る人は少ないかもしれない。
 バスケットボールの名門、デューク大の元スター選手で、リバウンド力がある上、ブロックショットを量産できるパワーのあるビッグマン。二ケタ得点の数で同大史上最多を誇るほど得点力も擁しており、将来NBAのスターとなることを期待されていた。
 ところが、彼が脚光を浴びたのは2006年のドラフトで、1巡目5位でホークスから指名されたところまで。ルーキーシーズンこそ公式戦82試合のうち81試合に出場し、うち31試合で先発を任せられたが、インパクトを残すことができず、以降3シーズンで先発を経験したことがない。今オフ契約したナゲッツは、彼にとってすでに5チーム目で、これまで所属したどのチームでもパッとしないままだ。
 一方、彼の妻キャンデイズ・パーカーは、テネシー大女子バスケットボール部を2年連続全米制覇に導いたスーパースターで、08年の米女子プロバスケットボール協会(WNBA)ドラフトでスパークスから全体の1位指名を受けると、同年のうちに新人王とシーズン最優秀選手(MVP)を獲得。またその夏に行われた北京五輪で金メダルを取った米代表の中心メンバーとなるなど、世界を代表する女子バスケットボール選手だ。
 知名度と実績においては妻のキャンデイズが断然上で、すっかり“格差婚”となってしまったこのカップルにおいて、ウィリアムズは“Mr. キャンデイズ・パーカー”などとからかわれている。
 だが、そのウィリアムズにチャンスが訪れそうな気配なのだ。

攻撃力を期待され変化の兆し

 彼の新チーム、ナゲッツはビッグマンが故障で手薄となっており、ウィリアムズに出場のチャンスが広がった。さらに攻撃志向のナゲッツにおいて、攻撃力も期待されているのだ。
 これまでは所属したどのチームからもディフェンスに集中することだけを求められた。だが、積極性が売りで、まだ若いウィリアムズにとって、攻撃なしでディフェンスだけに集中するということは難しく、自らのプレーを見失うだけでしかなかった。
「シュートも期待されるなんて環境は、大学時代以来だ」と話すウィリアムズは、公開紅白試合で7本のシュートすべてを決めて16得点をマーク。さらにプレシーズン最初のブレイザーズ戦では21得点14リバウンドの大活躍でチームを勝利に導き、変化の兆しを見せている。
 まだ調子に波があり、信頼できるとまでは言えない。だが、攻撃にGoサインが出た以上、得点とリバウンドのダブルダブル(両方で二ケタ)をトレードマークにしていたころのような気持ちで試合に臨めることは大きなプラスだ。
 潜在能力があるのに出せないままのウィリアムズ。
 今季こそ、人々に“Mr. シェルダン・ウィリアムズ”と呼ばせて欲しいところだ。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

ロサンゼルス在住。同志社女子大学在学中、同志社大学野球部マネージャー、関西学生野球連盟委員を務める。卒業後フリーアナウンサーとしてABCラジオの「甲子園ハイライト」キャスター、テレビ大阪でサッカー天皇杯のレポーター、奈良ケーブルテレビでバスケットの中体連と高体連の実況などを勤め、1995年に渡米。現在は通信社の通信員としてMLB、NBAを中心に取材をしている。ロサンゼルスで日本語講師、マナー講師、アナウンサー養成講師も務めている。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント