開幕したNFLでセクハラ論争

山脇明子

相手は「女性」ではなく「メディア」

 いよいよ北米プロフットボール(NFL)が開幕した。しかし、開幕早々話題になったのは、ジェッツの練習の取材に行っていたメキシコ系テレビ局の女性レポーターが、ロッカールーム内で選手やコーチから言葉による侮辱を受けたというものだ。
 彼女はイネス・セインツさん。その日のツイッターで「死ぬほど恥ずかしい思いをさせられた」と書き込んでいる。
 ロッカールームでジェッツのクォーターバック、マーク・サンチェスにインタビューしようと待っていた時に、選手やコーチが自分についてコソコソ笑って話をしていた。そしてその内容が彼女の容姿を侮るものだったと言うのだ。
 これを受けて、ジェッツのオーナーは直接セインツさんに電話をして謝罪。NFLも調査を始めるなど、即座に動いた。

 確かに、選手はメディアを容姿で差別してはいけないし、チーム、もしくはリーグから記者章を持つことを許された限り、相手は「女性」ではなく「メディア」だ。
 私自身、女性記者としての意見を言うと、練習や試合後のロッカールームでいつ来るかもわからない選手を待つことはあまり気持ちのいいものではない。その間に多くの選手がシャワーを浴びて着替えをするので、目のやり場に困るし、「彼女は一体誰を待っているのか?」という目で見られることもある。そういうのは非常に不愉快である。

現場での露出の多い服装も問題に

 だが、その事件のきっかけとなったのは、セインツさんが着ていた洋服だ。タイトなジーンズに透けて見える白いブラウス。胸元は大きく開いていた。
 彼女はこういったセクシーな格好で取材に来るので有名で、彼女の名前を検索すると、まるでナイトクラブに行くかのような格好で取材現場にいる写真ばかり。これでは、少々からかわれても仕方がないのではないかと思ってしまう。

 ただお国柄というものもある。メキシコ系の女性は、目のやり場に困るほど露出好きで、街を歩いていても、みんな胸の谷間丸出しのタンクトップなどを着ている。ロサンゼルスにも一人、メキシコ系の女性メディアがいるのだが(とてもメディアには見えないが、時々記者章をつけて現場に現れる)、胸の谷間からおへそまでぱっくりと開いているドレスを平気で着てロッカールームに現れる。そしてたいていミニスカートだ。彼女らにとっては、それがフォーマルな格好になるのかもしれないが、逆に見ているこっちの方が恥ずかしくなることもあるし、そういう格好の女性に目の前に立たれてインタビューされる選手は心地よく答えられるものなのかと疑問さえ感じる。

 セインツさんは、「女性であれば、誰だって魅力的に自分を飾りたいものだし、私はこのスタイルでスポーツレポーターという仕事を9年間やってきた」と話す。

 ジェッツの選手、コーチのやったことは間違っているし、彼女の主張も分かる。しかし、やはり仕事場であるのだから、お互いが気持ちよく仕事する環境をメディア側もつくらなくてはいけないのではないだろうか?
 試合後のロッカールームで真っ裸で話す選手がいないのと同じように、セインツさんももう少し、服装を考えるべきだと私は思う。

<了>
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著者プロフィール

ロサンゼルス在住。同志社女子大学在学中、同志社大学野球部マネージャー、関西学生野球連盟委員を務める。卒業後フリーアナウンサーとしてABCラジオの「甲子園ハイライト」キャスター、テレビ大阪でサッカー天皇杯のレポーター、奈良ケーブルテレビでバスケットの中体連と高体連の実況などを勤め、1995年に渡米。現在は通信社の通信員としてMLB、NBAを中心に取材をしている。ロサンゼルスで日本語講師、マナー講師、アナウンサー養成講師も務めている。

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