ラストシーズンを迎える早大・斎藤=東京六大学秋季リーグ見どころ

矢島彩

投手力充実の早大と法大が開幕で激突

大学球界で常に注目を集めてきた早大・斎藤はラストシーズンでどのような結果を残すのか 【島尻譲】

 11日の慶大−東大、法大−早大で、2010年東京六大学秋季リーグ戦が開幕する。大本命不在の混戦模様だ。
 いよいよ、早大・斎藤佑樹投手(4年=早稲田実高)がラストシーズンを迎える。この4年間、東京六大学の、大学野球の先頭を走ってきた。常に脚光を浴びる中で、4年間大きな故障もなく先発の役目を担ってきた。斎藤には心身のタフさを見せつけられた。
 最初の2年間で18勝。後半は、やや足踏み状態だ。3年春は4勝、3年秋は3勝、そして4年春は2勝。斎藤は今春の初マウンドで「(3年時が良くなかったため)いいイメージがなく不安があった」と振り返っている。今季も似たような胸中と、最後というプレッシャーのなかで法大戦を迎えることになるだろう。春の成績は数字だけ見るといまひとつだが、持ち前の制球力は復活気味。しかも、秋からはともに全国制覇を経験した白川英聖捕手(4年=早稲田実高)とバッテリーを組む。リーグ戦最終戦は、ドラフト会議2日後の早慶戦。どんなゴールが待っているのか。
 後ろには155キロ右腕・大石達也投手(4年=福岡大大濠高)がいる。課題の制球難を克服した福井優也投手(4年=済美高)も評価が上がってきた。3人全員が仕事を全うすれば、優勝も現実味を帯びてくる。
 
 早大にとって、開幕の相手・法大はいやらしいチームだ。今春は河合完治内野手(1年=中京大中京高)を、早大1回戦でデビューさせた。昨秋も打線を組み替えたり、さまざまな仕掛けを準備してくる。
 春は5位だったが、戦力は順位以上に充実している。152キロ右腕・加賀美希昇投手(4年=桐蔭学園高)、190センチ右腕・三上朋也投手(3年=県岐阜商高)、春の防御率1位・三嶋一輝投手(2年=福岡工高)と、早大同様に役者はそろっている。しかも3人とも完投能力があるのだ。加賀美は気合の入った打席も注目。奮起してほしいのが野手だ。規定打席到達者がわずか4人。野手を固定できなかったところに苦しさが垣間見られる。多木裕史内野手(2年=坂出高)の不振も響いたが、巻き返しに期待したい。 
 04年秋以来の開幕、早法戦。好投手同士のしびれる試合になりそうだ。

連覇狙う慶大は攻守に堅実

 11季ぶりに春のリーグを制した慶大。元プロ・江藤省三監督の手腕で、経験豊富な野手陣と、未知数だった投手陣がかみ合った。左腕・竹内大助投手(2年=中京大中京高)がリーグトップの62イニングを投げ、6勝2敗。「走者を出してもホームに返さなければいい」という粘りのピッチングが持ち味だ。130キロ台のストレートでも変化球でも空振りが取れる。福谷浩司投手(2年=愛知・横須賀高)は、13試合中10試合に登板。持ち前の速球を武器に、先発、リリーフにフル回転だった。春の開幕前、投手陣に故障者が出るなど想定外の出来事があったが、両腕が不安を一掃した形だ。ここにきて、山形晃平投手(1年=土佐高)、白村明弘投手(1年=慶応高)の150キロコンビも台頭している。
 野手陣は攻守に堅実。リーグトップの12打点を挙げた伊藤隼太外野手(3年=中京大中京高)、守りの要・渕上仁内野手(4年=慶応高)、長崎正弥捕手(4年=福井・高志高)など万全だ。江藤監督は「ミスだけは絶対にだめ。サインミス、バントミス、守備、無駄な四球…。これを減らしたい」と、引き締める。

 対する東大は前田善博投手(4年=栄光学園高)ら、投手陣が後半まで試合をつくれるかどうかにかかっている。今春も序盤で勝敗が決まる試合が目立った。攻撃は岩崎脩平内野手(3年=海城高)ら3年生が期待の大きい学年。彼らが中心となり、まずはチーム打率を2割(春は打率1割7分4厘)に乗せたい。

明大浮上のカギは野村 他大が警戒強める立大

 明大と立大は第2週から登場する。
 創部100周年の明大。春は善波達也監督が掲げる“守りの野球”が崩壊。早大から勝ち点を奪ったあと、立大、慶大に連敗。優勝争いから脱落して、勝率の差で3位に入った。「もう一度鍛え直すしかない」と指揮官も厳しく、一部の選手も油断があったことを認めている。投・攻・守、正念場で集中力を発揮したい。
 カギは大黒柱の野村祐輔投手(3年=広陵高)。春は後半、思うようなピッチングができず2勝止まり。味方のミスに泣いたときもあれば、リードを守り切れなかった試合もあった。1年時から投げている野村にとって、屈辱のシーズンだったことは間違いない。打線はベストナインの矢島賢人外野手(4年=桐生一高)、中村将貴外野手(3年=関西高)が好調だ。

 立大は他大が最も警戒心を強めている。5大学とは異なるチームカラーで、今季も台風の目になる可能性が高い。
  六大学一の打線という印象を残した春。チーム本塁打11本はリーグダントツ。打率2割7分7厘、17盗塁もトップだった。優勝した慶大、明大から勝ち点を奪い、混戦に拍車をかけた。4ホーマーの田中宗一郎外野手(4年=佐賀西高)、デビューシーズンで打率2位を残した西藤勇人外野手(2年=丸子修学館高)の活躍も目立った。彼ら以上に岡崎啓介内野手(3年=PL学園高)、松本幸一郎内野手(2年=横浜高)の全日本コンビの飛躍がチーム力を上げている。岡部賢也投手(2年=立教新座高)が一本立ちしたのも大きく、もう一人軸になるピッチャーが出てきてほしい。
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著者プロフィール

 1984年、神奈川県出身。『アマチュア野球』、『輝け甲子園の星』『カレッジベースヒーローズ』(以上、日刊スポーツ出版社)や『ホームラン』(廣済堂出版)などで雑誌編集や取材に携わる。また、日刊スポーツコム内でアマチュア野球のブログを配信中

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