大宮、3トップの最良のバランスを求めて=ラファエル、イ・チョンス、石原の同時起用へ

土地将靖

イ・チョンスの加入

新加入のイ・チョンスにかかる期待は大きい 【写真提供:大宮アルディージャ】

「石原(直樹)のスピード、イ・チョンスのゴール前でのテクニック、ラファエルのダイナミックさ――この3人はうまく組み合わせて使いたい」
 8月最後の公式戦となったJ1リーグ戦第21節セレッソ大阪戦を前にして、大宮アルディージャの鈴木淳監督はこう語っていた。
 指揮官としては当たり前の考えだろう。それぞれに独特の持ち味を持つ3枚のアタッカーを同時に起用し、その相乗効果でより迫力のある攻撃を展開できれば――。それは、イ・チョンスの移籍手続きが完了するよりも前、練習生として群馬県・嬬恋村での夏季キャンプでチームに加わった時からの、鈴木監督の構想だったはずである。

 だが、その最良のバランスを見つけるのは容易ではない。嬬恋キャンプでのザスパ草津との練習試合、2トップは石原・ラファエルのコンビではなかったが、イ・チョンスをサイドハーフとして起用する場面があった。流動的にポジションを変えながら前線へ出ていくイ・チョンス自身の攻撃力には素晴らしいものがあったが、2トップと2人のサイドハーフ、計4枚の攻撃陣がそれぞれ好き勝手に攻めているような印象。全体としてのバランスは二の次となり、ボランチや4バックにかかる負担が相当なものであることは手に取るように分かった。

 ワールドカップ・南アフリカ大会による中断が明け、大宮は7月14日の第11節、川崎フロンターレ戦でリーグ戦を再開した。イ・チョンスの登録手続きが進まない中、石原・ラファエルというなじみの2トップでスタートするが、なかなか結果が出ない。第15節の横浜F・マリノス戦を境に、鈴木監督は「前線で起点を作りたい」との理由からラファエルのパートナーを石原から市川雅彦にチェンジ。石原は試合終盤のジョーカーとしてベンチに置かれた。この戦い方が功を奏したのか大宮は連敗を止めると、続く浦和レッズ戦、湘南ベルマーレ戦と今季初の連勝を果たした。

試行錯誤の日々

 登録手続きが完了したイ・チョンスがようやくJリーグデビューを飾ったのは、第18節のジュビロ磐田戦。2トップのパートナーにはラファエルではなく、市川が入った。ラファエルは磐田戦直前の練習で右足首を負傷したのだ。
 鈴木監督はイ・チョンスのポジションについて、「ゴールに近いところでプレーをさせたい。中盤もできるので、ほかの選手との組み合わせやバランスを考えて、状況に応じてポジションを決めていきたい」と語っている。磐田戦では、まずはFWでの起用となった。
 しかし、コンビネーションはまだまだだった。先発でコンビを組んだ市川は、「前半はイ・チョンスに合わせ過ぎた。もうちょっと自分のプレーをしても良かったかも」と反省し、後半途中からFWに入った石原は逆に、「練習でそれほどコンビを組んでいないので、彼のためにどうプレーするか、というのはなかった」と振り返った。

 そして迎えたC大阪戦、ラファエルが戦列復帰し、イ・チョンスと初めて公式戦でコンビを組んだ。試合前には冒頭のように3人を使いたいと語っていた鈴木監督だったが、実際に先発で起用したのはラファエルとイ・チョンスのみ。石原はそれまでと同様、ベンチスタートとなった。
 大宮の2大エースの競演に胸を躍らせたが、事はそううまくはいかなかった。ゴール前まで攻め寄っても、最後が崩し切れない。ラファエル、イ・チョンス共にシュートからチャンスメークまで起用にこなし、ドリブルやテクニックもあるオールラウンドなアタッカーだけに、プレーの選択肢が多すぎるのか。

「初めてコンビを組んでプレーしたが、コンビネーションがまだまだいまひとつだった。それぞれいいプレーをしてはいるが、2人がかみ合ってその力が何倍かになる、とはなっていない」と、鈴木監督も組織としての未成熟さを認めた。石原も試合終盤に途中出場し、3人が初めて同時にピッチに立ったが、後半立ち上がりに退場者が出て数的不利に立たされたこともあり、その3人が有機的に機能する場面は見られなかった。

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著者プロフィール

1967年1月28日、埼玉県生まれ。93年、現在のWEB版「J's GOAL」の前身である試合速報テレホンサービス「J's GOAL」にて、試合リポーター兼ライターとして業界入り。2001年よりフリーランスとなりライターとして本格活動を開始、大宮アルディージャに密着し週刊サッカーマガジン(ベースボール・マガジン社)ほか専門誌等に寄稿している。

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