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“和製ボルト”飯塚、次世代をけん引するスプリンターを目指して=陸上

日本男子短距離初の金メダル獲得

世界ジュニア選手権、飯塚は男子200メートルで優勝し、日本男子短距離界に史上初の金メダルをもたらした
世界ジュニア選手権、飯塚は男子200メートルで優勝し、日本男子短距離界に史上初の金メダルをもたらした【Getty Images】

 スタートから無理のないスムーズな加速で前半のコーナーを走った飯塚翔太(中大)は、直線へ入った時、5人がほぼ一線に並ぶトップ争いの位置にいた。7月23日、カナダのモンクトンで行われた世界ジュニア選手権男子200メートル決勝。「僕は後半の持久的なものが長所なので…。直線に入った瞬間には勝てると思いました」という彼は、持ち前の大きく柔らかい走りでラスト50メートルから抜け出し、2位に0秒22差をつける圧勝劇を演じた。


 向かい風0.5メートルの条件下での記録は20秒67。5月の静岡国際陸上競技大会でマークした20秒58の自己記録にはわずかに及ばなかったが、どの選手も軟らかいと言うトラックで出した記録は、世界大会での日本男子短距離史上初の金メダル獲得とともに価値の高いものだ。

「優勝を狙いにいったので本当に良かったですね。みんな(身長が)大きかったけれど、気持ちで負けないようにしようと思っていました。すごく楽しかったですし、“日本人でもできる”というのを見せることができました」

 こう言う飯塚は、決勝で前半から飛び出す選手がいなかったのも運が良かったと笑顔を見せる。この大会の100メートルで優勝したデクスター・リー(ジャマイカ)が、200メートルでは予選でフライングをして失格。昨年の世界ユース選手権(イタリア)の200メートルと400メートル2冠のキラニ・ジェームス(グレナダ)が400メートルに絞って出場していたことも、彼が楽な展開で勝てる要因となった。

「世界ジュニアで金」に向けた確実な調整

6月の日本学生個人選手権では、男子200メートルで大会新記録をマーク。世界ジュニアへ向け、着実にコンディションを上げていた
6月の日本学生個人選手権では、男子200メートルで大会新記録をマーク。世界ジュニアへ向け、着実にコンディションを上げていた【写真は共同】

 藤枝明誠高3年の時に出場したインターハイで200メートル、国民体育大会(国体)で100メートルを制して注目されていた飯塚は、中央大1年の今年になり、一気に大器としてのベールを脱いだ。4月18日の静岡県中部地区選手権100メートルで、追い風参考記録ながら10秒22をマークし、5月3日の静岡国際陸上200メートル予選では向かい風0.6メートルの条件下、それまでの自己記録を0秒43更新する20秒58で走ったのだ。その大会の決勝は左ハムストリングに疲れがあるからと大事をとって棄権したため、それほど注目されることはなかったが、5月22日の関東インカレ4×100メートルリレーでは、38秒54の日本学生新記録を樹立した中大のアンカーとして走り、2位を一気に8〜9メートルも突き放す爆発的な加速力をみせた。さらに翌日の200メートル決勝でも、20秒48の自己記録を持つ実力者の安孫子充裕(筑波大)に0秒26差をつけて圧勝して、一躍注目され始めたのだ。

「この冬はいつもより時間が取れて、今までにないほど充実した練習ができました。それに年末から10日間ほど米国のテネシー大へ行って練習し、レースのことやドリル(フォーム矯正するための反復練習)などを分かりやすく説明してもらい、改めて勉強してきました」

 記録向上の理由をこう説明する飯塚には、200メートルの第一人者・高平慎士(富士通)の不調もあり日本選手権(6月・香川)で一気に日本一へ駆け上がるチャンスもあった。だが彼は今季最大の目標を「世界ジュニアの金メダル獲得」と決めていた。そして当初の予定通りに日本選手権を回避。予選、準決勝、決勝というパターンを経験する意味で6月18日からの日本学生個人選手権に出場し、世界ジュニアへ向けて仕上げていた。

折山淑美
1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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