“和製ボルト”飯塚、次世代をけん引するスプリンターを目指して=陸上
ロンドン五輪は「出て戦わなくてはいけない立場」
“和製ボルト”と称される飯塚は、これから世界でどのような活躍を見せてくれるだろうか 【Getty Images】
彼を“19秒台も可能な大器”と期待する理由は、184センチ、79キロの大きな体だけではない。「中学時代からケガが多い選手だったので、高校時代のテーマはとにかくケガをさせないこと。練習は、彼の能力に対して50パーセントくらいしかさせていないし、レースでも余力を残して勝負させた」と藤枝明誠高時代の恩師・佐藤常保コーチが話していたような、伸びしろの確かさだ。世界ジュニアの決勝でもまだ力を出し切った走りではないように見えた。それに対して飯塚は、「力を出していないように見えるのが僕の理想の走りですから」と笑顔を見せる。
「今年はしっかり練習して、来年からはシニアでも戦えるようにしたいですね。五輪は小さいころからずっと目標にしていたし、絶対に出たいと思っていました。でもこれで、ロンドンも『出て戦わなくてはいけない立場』になったと思います」
こう話す飯塚の今年の世界ジュニア制覇とならぶ目標は、高校時代にはほとんどやっていなかったウエートトレーニングなどを取り入れて、体づくりに励むことだ。しっかりと土台を作り上げ、来年から世界へ挑戦するというスケジュールをかたくなに守った先に、“和製ボルト”と称される彼の、本物のスプリンターへ成長する道が開けてくるはずだ。
今回の世界ジュニアで日本は、飯塚以外にも銀2、銅2のメダルを獲得した。その中でも男子やり投げで自己記録を2メートル38センチ更新し、昨年の世界選手権(ベルリン)銅メダリストの村上幸史(スズキ浜松AC)が持つ日本ジュニア記録にあと10センチまで迫る、76メートル44を投げて2位になったディーン元気(早大)の健闘は見事だった。昨年の世界選手権で村上が世界と戦えることを示した直後の結果だけに、彼も今後は、しっかりと世界との戦いを視野に入れて挑戦できるはずだ。
飯塚の金メダルを含め、合計5個のメダルを獲得した日本。陸上界をけん引する力となることを期待したい 【Getty Images】
今回の世界ジュニア選手権に出場した選手たちは、これまで日本陸上界を引っ張ってきた“末続世代”(※)の再来を感じさせる活躍を見せてくれた。
※男子短距離の末続慎吾(ミズノ)のほか、同短距離障害の内藤真人(ミズノ)、同棒高跳びの澤野大地(千葉陸協)、同走り高跳びの醍醐直幸(富士通)、女子走り幅跳びの井村久美子(iDEAR)ら陸上界で活躍を見せる1980、81年の生まれの選手たち
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