「ちょっと違った」海外組、「足りないものがある」Jリーグ=柏木陽介(浦和)の日本代表分析・W杯観戦記
浦和のMF柏木陽介が選手の目から日本代表、W杯について語った 【Photo:松岡健三郎/アフロ】
「思い切った戦いをしても良かった」パラグアイ戦
さて、パラグアイ戦を振り返りたいと思います。結果はとても残念でした。PK戦での決着ですから誰を責めるわけにもいかない。すごくよく戦っていたと思いますし、みんなでよく守っていたと思います。
ただ、このみんなで守った、まとまっていたというのはすごいところなのですが、外から見ているとどうなんだろうなと思ってしまう自分もいました。「日本らしい戦い」も見てみたかったからです。自分たちが本来目指してきたサッカー、激しくプレッシャーを掛けて攻めるサッカーも見てみたかったな、と。せっかく決勝トーナメントに進んだのですから、思い切った戦いをしても良かったのかもしれませんね。ただ、W杯は勝負が何よりも優先される舞台ですから、あのようなサッカーを選択するのもとても分かるので、難しいですね。
「思い切ってやれば、絶対に通用する」日本人のドリブル
パラグアイDFと競りながらドリブル突破する松井。柏木は「絶対に通用する」と日本のドリブルに手応え 【Photo:Maurizio Borsari/アフロ】
また、大切なのは一生懸命、我慢強くプレーする選手の存在だと思いました。駒野(友一)さん、阿部(勇樹)さん、(長友)佑都くんたちの粘り強い、我慢のディフェンスがチームを何度も救いました。そういう選手たちの存在は、世界に行けば行くほど光っていると思いました。
そして、なんといっても、選手たちのモチベーションの高さにぐっときました。Jリーグでやっているのとは、まったく違った高いモチベーション、表情でやっている。大きな舞台に立てる喜びと、強い相手と対戦するとき特有の闘志を感じました。やっぱりこういう舞台でやりたいと思いましたし、サッカー選手なら誰でもそう思ったのではないでしょうか。
個人的には、「次の日本代表に入りたい」とやっぱり強く強く思いました。そのために何をするかといえば、まず(自分の)レベルを上げること。何のレベルかと言えば、スペイン代表を見ていて強く思ったことですが、基礎の部分です。ゴールに直結するトラップ、強くて速いパス、ゴールマウスへのパスであるシュート、そしてドリブル。すべてを磨かないと。
加えて、自分が戦う舞台であるJリーグで頑張って結果を出して、Jリーグのレベルを上げていかないといけないと思います。日本代表の海外組がスピードに対応できていたと話しましたが、Jリーグに足りないものがあるのは現実だと思います。だから、Jリーグでの戦いを激しいものにしていく必要、責任があると思います。僕自身は年齢的には、メッシ(リオネル・メッシ=アルゼンチン)やセスク(ファブレガス=スペイン)と同じ1987年生まれなんですよね。以前にも話しましたが、海外のチームを見ても、年齢的にはもう代表で主軸になっていないといけない年齢です。だから、早く結果を出したいと思います。
オランダ対スペインの決勝は「予想外の組み合わせ」
スペインは、能力は高いし一番面白い、見ていて楽しいチームではあるのですが、まさかドイツに勝つとは思いませんでした。ベスト4くらいのチームなのかと思っていました。スペインには勝負強さみたいなものが欠けている印象があったんです。ですが、ドイツの攻撃を封じましたよね。僕はドイツが強いと思っていたんですよ。鉄壁の守備だけでなく、今大会で僕は初めて知った(メスト)エジルや(トーマス)ミュラーら若手が絡んだ攻撃は多彩でした。カウンターあり、中盤のパスワークありで、バランスも良かったと思います。
でも、そのドイツが力を発揮できない、出来の悪い状態に追い込んだのはスペインのパスワークでした。ドイツはシュート5本、枠内シュート2本と、イングランド戦、アルゼンチン戦からは想像もできないほど(悪い内容)でした。試合を支配し続けたスペインは本当にすごいとしか言いようがないですね。しかも決勝点はコーナーキックから。気迫を感じさせてくれました。
決勝の展望は……。正直なところ、まったく分からないですね。思い切って打ち合って、自分たちらしさを出してほしいという、見ている側の願望はあるのですが。注目してきたスペインにここまできたら勝ってほしいとは思いますが、本当に予想はできません。ただ、攻撃的な面白い試合になりそうなので、楽しみに待ちたいと思います。
<了>
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