ストラスバーグだけじゃない=2010年は有力新人がめじろ押し

出村義和

新人の活躍が目立つシーズン

タイガースのボウシュは打撃3部門でルーキートップの成績を残している 【Getty Images】

 デビュー戦で14三振を奪った驚異の新人、スティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)が快投を続けている。まだ4試合の登板だが、それでも41奪三振。そのセンセーショナルな投球に、ファンやメディアの間では7月13日(現地時間、以下同)に迫ったオールスターゲームに特例で出場させるべき、という声が上がるほど。このストラスバーグだけでなく、今年は新人や若手選手の活躍が目立つシーズンだ。しかも、彼らの働きが優勝争いに重大な影響を及ぼし始めている。
 2010年――。新たなディケード(10年)の始まりに相応しいニューウエーブの到来。その代表的な若手選手たちをピックアップ、合わせて所属チームのポストシーズン進出の可能性を探ってみよう。

タイガースの中心的役割を期待される3人

 ア・リーグ中地区で首位ツインズを追うタイガースは26日、対ブレーブス戦で3人の新人をスタメンに起用した。1番打者オースティン・ジャクソンは三拍子そろった外野手。その日、初回にいきなり中前に安打を放ち、リーグ新人トップの12個目の盗塁を決めた。5番に入ったパワーと確実性を備えたブレナン・ボウシュ外野手は、打率3割3分8厘、12本塁打、43打点で規定打席に達すればリーグ新人打撃3部門のトップに立ちそうだ。つまり新人三冠王だ。そして、8番アレックス・アビラは強肩強打の捕手で、レギュラーの座を目前にしている。
「彼らの活躍抜きに優勝争いは考えられない。この3人は近い将来タイガースの中心的役割を果たしてくれるだろう」と、ジム・リーランド監督は語る。この新人トリオが順調に成長を続ければ、タイガースがツインズ、ホワイトソックスとの三つ巴(どもえ)レースに勝ち残る可能性は広がるだろう。

 ブレーブスには、開幕戦にメジャー初打席で3ラン本塁打を放った高い運動能力を持つファイブツールプレーヤーのジェーソン・ヘイワード外野手がいる。その日は先発を外れたが、4月、5月と連続して最優秀新人に選ばれる大活躍で首位進出の立役者になった。
「オレの後継者」と、主砲のチッパー・ジョーンズが太鼓判を押す大物。名将ボビー・コックス監督勇退の花道を飾るためには、この20歳は必要不可欠な存在だ。
 ブレーブスを追うメッツには投打のキープレーヤーがいる。メッツが最後に世界一になった日に生まれた左腕ジョン・ニースは先発で4勝をマーク。故障が癒えて戦列復帰を果たして日が浅いが、これからは特徴のあるカーブを武器に白星を積み重ねていくに違いない。
 打線の中軸を担っているのは、名門アリゾナ州立大出身のアイク・デイビス一塁手だ。大物打ちの少ないチームにあって9本塁打とパワーを発揮している。カンフル剤として機能していれば、メッツにも十分に優勝チャンスが出てくる。

素質豊かなルーキーがめじろ押し

 本命カージナルスと激しい首位争いを演じているレッズでは、史上21人目のマイナー経験なしでメジャーリーガーになったマイク・リークが先発で5勝を挙げている。ウリは『精密機械』グレッグ・マダックスと比較され始めた素晴らしい制球力だ。

 そのリーク以上の活躍を見せているのが、カージナルスの左腕ハイメ・ガルシアだ。開幕から先発陣に入って7勝をマークしているが、注目すべきはリーグ3位の2.27という防御率だ。大きなカーブを軸に、新人離れした投球術は風格さえ感じさせる。打撃陣では27歳と遅咲きのデービッド・フリース三塁手。一発の魅力には欠けるが、シュアーな打撃で打率は3割ちょうどでリーグ新人2位につけている。
「オレもハイメも集中力を切らさずにしっかりとした仕事ができている」と、フリースは自信たっぷり。レッズとの一騎打ちの様相を呈してきた争いは、この新人の台頭でますます興味深いものになるだろう。

 ア・リーグ西地区で破竹の11連勝、首位をがっちり固めているのがレンジャーズだ。その立役者のひとりは、新人部門ではなくリーグ全体でトップの20セーブを記録しているネフタリ・フェリスだ。最速100マイルの剛速球で開幕直後にクローザーの座にすわった。
「ヤツの存在がなければ、この位置にいることはなかった」と言うのは、チームリーダーのマイケル・ヤングだ。打倒エンゼルスを果たすには、この22歳の新守護神の右腕次第ということになりそうだ。また、レンジャーズには強打のジャスティン・スモークという一塁手がおり、8本塁打と期待通りのパワーを発揮している
 このほかにも、ジャイアンツの強打捕手バスター・ポージーなど、素質豊かなルーキーがめじろ押し。今年の優勝争いはフレッシュな顔ぶれがそろって、ますます面白い展開になってきた。

(記録は現地時間6月27日現在)

<了>
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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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