本田は“生粋の才能”、遠藤のFKは“プラティニ風”=欧州メディアが日本を絶賛
『ガゼッタ』の日本評は軒並み高評価
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は岡田監督のさい配に7点の高得点を付けた 【Getty Images】
ところで、フランスのテレビ解説者は褒める一方だったので、いつも辛口の『レキップ』紙の選手評見たさに早起きして新聞屋に行ったところ、なんと新聞がまったくなかった。何でも24日がゼネストだったので、25日の新聞は一切ないのだという。そんなわけで、各選手の採点はお見せできないのだが、もし26日の新聞に出ていたらニュースでご紹介したい。
その埋め合わせとして、ここではパジェラ(通信簿)の元祖であるイタリア紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の採点をご紹介しよう。ゼネストでイタリアの新聞の配達もなかったので、知り合いの『ガゼッタ』紙の記者に直にメールしてもらったものである。
まず総評は、日本が7でデンマークが5。ガゼッタは監督にも点を付けるが、岡田監督は「プレーに適切な韻を踏む、“詩人”監督」で7点。“Poeta(詩人)”には夢想家の意味もあるので、準決勝行きを宣言したことに引っ掛けているのかもしれないが、この“詩人”は、いまや世界の注目を集め始めている。
最高得点は、本田の8。“最優秀選手”のただし書き付きで、理由は「FKからの得点。ピッチの至るところに出没。岡崎へのアシスト。1人でチームを高い位置にキープ。偉大な選手」。次席の7点は、2本目のFKを決めた遠藤、「結い上げた髪でベントナーを覆い隠した」闘莉王、「体内に小型エンジンを持っているに違いない」よく走った大久保。こうやって見ると『ガゼッタ』の評は『レキップ』のまじめな評よりスパイスが効いている。
続く6.5点は、「中盤で奮闘し、ゴールもかすめた」松井、「ヘッドで多くのボールをクリアした」中澤、「本田の私欲のないパスに際し、しっかり準備していた」岡崎、そして「攻守の連結をつかさどった」阿部、「飛び出しにおいて常に注意深く、PKすら一度はブロックした」GK川島。6点は、「カウンターアタックでピッチを絶え間なく上下した」長友。「サイドをしっかり押さえたが、仕事量があまり多くなかった」駒野だった(駒野はなぜか評だけで点がなかった。新聞の校正の段階で入ったかもしれない)。
最も点が低かったのは、「悪気なく(相手選手を)押して」PKを許したかどで5.5点の長谷部だった。ちなみにフランスのテレビは、あの程度押したくらいでPKを与えた審判は「かなり気前が良い」と言っており、それより終了間際にデンマーク側のシュートが長谷部の腕に当たった場面の方が、よりPKに値したと言っている。
最後にイギリスの『テレグラフ』紙の見解を紹介すると、同紙は日本のプレーを「かみそりのようにシャープで壮観」と表現。FKについては、ジャブラニが非常に扱いにくいボールであることを語った上で、本田と遠藤がそのボールを操った巧みなやり方は、「日本がほかの国が持たない高度な専門技能を擁することを示して見せている」とした。遠藤のFKを「おそらく今大会のベストゴール」と呼び、本田に関しては、イギリスらしい冷静な語り口ながら「このワールドカップのスターの1人として浮上しつつある」とまで言っている。
フランスの批評家は「これまで母国の大会以外で勝っていなかったので注意を怠っていた……」と、見る目がなかったことを反省。『ガゼッタ』紙は、「日本がデンマークに勝ったのは、日本の方が強いから。その一言に尽きる」とし、やはりパラグアイに、日本を過小評価しないよう警鐘を鳴らした。
しかしいま、日本の方こそが、有頂天にならないよう注意しなければならない。こんな絶賛記事など読まず、余計なことは考えず、この勢いに乗って無心でつき進んでほしい。「まだ先がある」と言った本田は、恐らくそのことを分かっている最たる人物なのだろう。
<了>