王者イタリアに“らしくない”守備の乱れ=グループリーグで早くも正念場

宮崎隆司

「1−0でモノにできれば十分なんだが……」

格下のニュージーランドとも引き分け、王者イタリアは2試合連続ドローとなった 【ロイター】

 第2戦は6月20日、対ニュージーランド。大柄な選手をそろえる相手に対し、イタリアはどう戦うのか。試合前日の練習では、グラウンダーのパスを連続してつないで縦に素早く攻め込むという流れ、と同時にピッチをできる限り広く使う形を繰り返し確認していた。
 この日の布陣は4−4−2。GKマルケッティ。DFは右からジャンルカ・ザンブロッタ、カンナバーロ、ジョルジョ・キエッリーニ、クリシート。MFは同じく右からシモーネ・ペペ、デ・ロッシ、リッカルド・モントリーボ、マルキージオ。FWはアルベルト・ジラルディーノとイアキンタ。

 パラグアイ戦では欠けていた相手ゴール16メートルでの激しさ、畳み掛けるような分厚い攻め。これができるか否か。守備的ではないイタリアを、ニュージーランド戦でも露呈するのか。
 今大会の本命と言われたスペインが初戦を落とし、イングランドが不振を極め、フランスが1分け1敗と崖っぷちに追い込まれる一方で、カンナバーロは19日、いつになく静かな口調でこう述べていた。「おれたちらしく、1−0でモノにできれば十分なんだが……」。それは大会の序盤からむやみに飛ばす必要はないという意味なのか、あるいは暗に現代表の限界を示唆した言葉なのか。いずれにせよ、W杯連覇を信じる声と早期敗退を予想する声が混在する中、イタリアはネルスプレイトにあるムボンベラ・スタジアムのピッチに降り立った。

最後には帳尻を合わせてくるのか

 ニュージーランド戦の結果は周知の通り、またしても1−1の引き分けに終わった。相手が変わったとはいえ、イタリアの戦い方に特別な変化はなかった。第1戦は4−2−3−1から4−4−2。第2戦は4−4−2から4−2−3−1。変化の順序こそ変わったとはいえ、そのコンセプトに大差はない。そしてプレーの質もまた同じだった。

 守るためだけに徹底して守備を固めてくる相手に対して、それを崩すだけのアイデアがない。鍵であったはずのプレー、サイドエリアに相手DFを引き出して中央に穴を空けるという策も、遂に功を奏することはなかった。事実、後半開始からペペに代えてカモラネージを入れた理由について、リッピは「(ペペが)指示とは違うプレーに終始していたからだ」と答えている。57分、たまりかねたカンナバーロがベンチに駆け寄り、「FW陣の位置が中央に寄り過ぎている」とリッピに訴えたシーンが、この行き詰まった現状を如実に示していると言える。

 いずれにせよ、この引き分けで「タイトル防衛」の可能性が限りなく小さくなったことは確かだ。第3戦のパラグアイ対ニュージーランドのスコア次第では、引き分けでも決勝T進出の可能性が残るとはいえ、事実上、2位通過を果たすにはスロバキアに勝つことが絶対条件となる。
 スロースタートが常のイタリアは、果たして最後には帳尻を合わせてくるのか。気になるのは、あの強気で知られるリッピがニュージーランド戦後の会見で、スロバキアに「勝てなかった場合」について自ら触れたことだ。どうやら、第1戦にして垣間見られた現イタリア代表の限界は、この第2戦を経てさらに鮮明になってしまったようだ。勝つべき相手に勝てなかったことで、唯一の武器であるはずの結束にも綻びが見えるようでは、リッピ自身が言うように、それは「上に進むに値しないチーム」であったということでしかない。

 6月24日、前回覇者イタリアは早くも正念場を迎えることになる。

<了>

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著者プロフィール

1969年熊本県生まれ。98年よりフィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。2004年の引退までロベルト・バッジョ出場全試合を取材し、現在、新たな“至宝”を探す旅を継続中。『Number』『Sportiva』『週刊サッカーマガジン』などに執筆。近著に『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜』(コスミック出版)

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