ゼムノビッチ氏「オランダ戦はメンバーを変更すべき」=日本代表・カメルーン戦レビュー

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ゼムノビッチ氏は本田のワントップが勝利へ導いたと評価する 【ロイター】

 サッカー日本代表は14日、2010年ワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会の初戦となるカメルーン戦に臨み、本田圭佑のゴールで1−0の勝利を収めた。
 元清水エスパルス監督で日本サッカーにも精通するズドラヴコ・ゼムノビッチ氏に、カメルーン戦の印象、そして19日のオランダ戦への戦い方などをうかがった。

本田のワントップは評価すべきシステム

 まずは勝つことができて良かったです。強化試合ではなかなか良い試合ができませんでしたので、多くの反省点を次に生かすという意味では、カメルーン戦では良い答えが出ていました。大変意味のある勝利でした。
 岡田監督の選手選考は素晴らしかったですね。彼は初戦にいわゆる“戦える選手”をぶつけていきました。カメルーン相手に良い意味でリスペクトをしない選手。スター選手に物おじすることなく、自分たちのサッカーを貫き通した結果が1−0という勝利につながったと思います。
 本田や大久保らは、言葉は悪いかもしれませんが“傲慢(ごうまん)さ”を出していた。ポジティブな意味での傲慢さですね。真剣勝負の試合ではこれがすごく大切になってきます。これがカメルーン戦の勝利につながった大きなポイントですね。

 あとは今までパス、パス、パスというサッカーをやってきましたが、カメルーン戦では違いました。例えば本田、大久保、松井がボールを持ったらドリブルで果敢に仕掛ける動きが見られました。大事なポイントでファウルを誘って、相手の流れになりそうな時間帯になるのをうまく遮る。時間をうまく使うことは、以前の日本代表にはなかったことです。

 本田をワントップに据えるシステムは、選手に自分の役割を明確にさせる上でも評価できるものだと思います。本田はキープ力がある。だから、そこでタメができる。ほかの選手の動き出しやサポートがそこで生まれるんです。あとは前を向いてドリブル突破することができるのも、彼の大きな強みです。1対1、もしく1対2という状況でも強引に仕掛けることができますし、ボールを簡単に失わない体の強さもあります。
 大久保と松井に関しても、彼らの特長である突破力を生かすためにはとても良いシステムでした。例えば、後方からのサポートが少し遅くなっても、1人で仕掛けることができるので、相手にとっては大きな脅威になっていたと思います。

 守備に関しては、センターバックの中澤と闘莉王の集中力が最後まで途切れませんでしたね。ミスもなかった。それに、三角形の頂点である阿部のアンカーが機能していました。試合終盤、カメルーンがパワープレーに徹していた時間帯も、常に危ない場面を回避する働きをしていましたし、ロングボールを中澤や闘莉王が懸命に跳ね返していた場面でも、そのセカンドボールに対して高い集中力を見せていました。
 これはどのポジションにも言えることなんですが、守備的な選手を並べるのではなく、守備の意識が強い選手を並べることがとても大切なんです。もちろん守備能力があればベターですけどね。日本がW杯で戦うためには、この守備意識が高くないとなかなか勝利を手にすることが厳しい。また、GKの川島をはじめ、最終ラインの選手は声を出し合って集中力を維持していました。

 選手交代も良かったのではないでしょうか。岡田監督の明確な意図が表れていたと思います。相手が疲れている中、DFの背後を取る動きを得意とする岡崎の投入は効果的でした。矢野も良かったですね。終盤で1点をリードしている時間帯で、相手のセットプレー時には彼の高さが守備の点で生きる。また、運動量も豊富ですので、前線でのプレッシャーは日本代表に大きな効果を生み出していたと思います。最後にピッチを後にした長谷部は欧州でプレーしているためか、最後は体力的に厳しかった。重要なポジションであるために、フレッシュで動ける稲本を入れたことも評価すべきポイントです。

決勝T進出の鍵はメンバー変更

 カメルーンはいわゆるゲームメーカー不在が響きましたね。攻撃の起点がなかった。だからどうしてもエトーに頼らざるを得ない。そこに長友というマンマークが強い選手がいて、ほぼ完ぺきに抑えられてしまったんです。このままではダメだと思ったのでしょう。ルグエン監督は(後半30分に)イドリスを投入したんです。彼は背が高く(190センチ)、ヘディングが強い選手です。ここからロングフィードが多くなってパワープレーのサッカーに変更したんですね。でも、実は日本はパワープレーの対応を得意としているんです。高校や大学サッカーではよく見られるプレーですから。逆にサイドからクロスを上げられる方がよほど怖かったはずです。

 決勝トーナメントに進出するためにはどうすればよいか。(第2戦の)オランダは確かに強いです。引き分けることさえ難しいかもしれない。そこで、わたしなら第3戦のデンマーク戦で勝ち点3を絶対に奪うために、オランダ戦で何人かメンバーを変えます。メンバーを「落とす」という意味ではありませんよ。チーム力が落ちるという表現は好ましくありませんから。
 まず、グループリーグ3試合全部を同じメンバーで戦うのは厳しい。特に試合会場は高地、低地、高地と続くわけですから、体力面での不安があります。回復が遅れる可能性もある。そこで(カメルーン戦で)負担がかかった選手を休ませるんです。
 今までレギュラーだった選手、例えば岡崎、中村俊輔、楢崎がスタメンに復帰することは何ら問題ではありません。そもそも、ベストメンバーとは何を意味するのかという話です。カメルーン戦で勝利したメンバーなのか。わたしにとって、ベストメンバーとは最もコンディションが優れている選手が11人そろっていることなんです。(カメルーン戦で)控えだった選手、出場しなかった選手が、オランダ戦に向けてベストコンディションに調整していくことが良いサッカーをするための重要なポイントだと思います。デンマーク戦を見据えてオランダ戦に臨むべきです。

<了>

ズドラヴコ・ゼムノビッチ
1954年3月26日生まれ。セルビア出身。清水エスパルス監督時代には天皇杯とゼロックス・スーパーカップで優勝。2002年のW杯・日韓大会では、清水から森岡隆三、三都主アレサンドロ、戸田和幸、市川大祐の4人がメンバー入りした。セルビアに帰国後は監督業を続けるも再来日。現在は清水エスパルスや千葉県内でユース世代の育成に力を注ぐ
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