ドログバとアネルカ、チェルシーのエースFWがW杯を語る

チェルシーでコンビを組むドログバ(左)とアネルカ(右)が対談。互いのプレースタイルやW杯の話題で盛り上がった 【Photo:アフロ】

 コートジボワール代表のディディエ・ドログバとフランス代表のニコラ・アネルカ。共にチェルシーに所属するストライカーは今季、リーグ戦で2人合わせて40ゴールをたたき出した。ドログバは得点ランキング首位の29ゴール、アネルカは11ゴール。さらに両者はアシストランキングでも3位(ドログバ)と6位(アネルカ)につけ、チャンスメーカー&ゴールゲッターとして、チェルシーの4シーズンぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。

 そしてこの6月、2人はそろって南アフリカで行われるワールドカップ(W杯)に出場する。ドログバにとっては、初めてアフリカ大陸で行われる記念すべき大会。そして、アネルカにとっては、初めてのW杯となる。チェルシーが誇る2人のFWが、来るW杯、そして互いの印象、プレースタイルなどについて語った。

ドログバ「僕らは同じ瞬間に同じことを望んでいる」

――ディディエ、ニコラがチェルシーにやってきた時、君は「また、僕がベンチに追いやらなきゃいけないFWが来たか」と思ったのでは? グジョンセンやケジュマン、クレスポ、ピサロ、シェフチェンコの時のように……

ドログバ そんなわけがないだろう! 僕はアタッカーを食らう鬼じゃないんだよ! (アネルカがやって来たのは)ジョゼ・モリーニョが数カ月前に去ったばかりの時で、(当時の監督の)エイブラム・グラントは僕らにプレーのやり方を変えると言った。だから僕は、「それは良かった、やっと2トップでプレーできるようになる」と思ったんだ。攻撃をたった1人で背負うことに疲れ始めていたから、僕にとってありがたいことだった。それに、グラント監督から「ニコラは良いチョイスだろうか」と聞かれた時、僕は「突撃しろ」と、つまりためらわずニコラを獲るようにと言ったんだよ。

アネルカ FW同士の間では、しっくりいくかどうか、すぐにピンとくるものなんだ。僕はすぐさま、ディディエの周りを動いていい形でプレーする自分の姿を想像した。僕はゴールを量産し、スターになるためにチェルシーに来たわけじゃない。むしろ、ディディエが可能な限り多くのゴールを挙げられるよう、彼にパスをするために来たと言ってもいいだろう。それを理解するには、ディディエのプレーを眺めるだけで十分さ。

 彼は非常にフィジカルが強くて、ただ自分の周りにチャンスメークの動きがあることだけを必要とするターゲットマンだ。そして、僕はこういう状況でプレーするのが好きなんだよ。リバプールでのへスキーとの2トップを思い出すね。僕は、へスキーやマイケル・オーウェンといったストライカーに、彼らがゴールできるようチャンスを提供する役を恐れてはいなかった。それはディディエとのコンビでも同じだよ。こういったタイプのやつらとプレーするのは楽しいんだ。

――ニコラのような選手の隣でプレーすることが容易なのはなぜ?

ドログバ 彼が、僕と同じようにプレーを解釈しているからじゃないかな。本能的に、僕らは同じ瞬間に同じことを望んでいる。その点については、これといった論理的な説明はできないんだ。言ってみれば、攻撃の局面で僕らは同じ“辞書”、同じ“言語”を持っている。僕らはすぐに、他方が何をしようとしているかが分かるんだ。
 自然な相互理解によって攻撃の出発地点で時間を節約できれば、必然的に、稼いだリードのおかげで最後の詰めの部分でより楽に事を運べる。特に僕らのように、2人のアタッカーの双方が、スピーディーにボールが動く状況が好きな場合はね。

――攻撃での理想のパートナーの定義は?

アネルカ 「こいつに、仕掛けた仕事を決めさせてやりたい」と、自分が素直に願えるような誰かだ。心からそいつの成功を願えるような誰か。その選手がゴールを決めたとき、もう1人はただ相手のためにうれしく思い、あれこれ自問したりはしない。この誠意とある種の無関心さがないと常に疑念が存在してしまうから、デュオをうまく機能させることは難しくなる。
 時として、自分の横にいる選手が自分のこと、自分のゴールのことしか考えていないことがある。自分には稀にしかパスを受け取る権利がないと分かっていると、そいつに得点させるのは(心理的に)難しくなる。もちろん、そういうことが僕に起きたことも過去にはある。そういう状況は、ピッチ上の関係と連係を難しくしてしまうものなんだ。

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著者プロフィール

1968年3月3日生まれ。『レキップ』紙を経て、98年より『フランス・フットボール』誌の記者として活躍。フランスのほかアフリカサッカーを得意分野とし、かの地に広いネットワークを持つ。特にドログバと親交が深く、取材がなくても電話で近況を報告し合う仲。2007年には同誌上でチェルシー批判を含むドログバの激白インタビューを発表し、国内外でセンセーションを巻き起こした。趣味は自分の子供と遊ぶこと、テニス、文学

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