156キロ右腕が見せた成長=ドラフト1位候補 中大・澤村拓一リポート
高橋監督「頼りになるエースになりかかってる」
この日の澤村は、初回からエンジン全開。最速153キロの直球に140キロを超えるフォークを交え、3回までパーフェクトピッチング。序盤でドラフト1位候補の実力を証明して見せた。
中盤に2点を失い同点に追いつかれたものの、大きな成長が見えたのは、むしろその後だった。味方のエラーで同点とされた5回2死二、三塁の場面。これまでの澤村ならば、悪い流れを断ち切れず、崩れてもおかしくなかった。だが、この日は後続をセンターフライに打ち取り、逆転の芽を摘み取った。最大のピンチを乗り切った澤村はその後、被安打1、二塁を踏ませない投球で相手を牛耳り、延長10回の勝ち越し点を呼び込んだ。
「156キロを出した昨秋の開幕戦(青学大1回戦、3失点で敗戦投手)は踏ん張れなかったけど、今日はミスが出ても踏ん張れた」と本人は納得の表情。高橋監督も「(エラーで)同点に追いつかれてもそこで抑える。それは澤村の持っている力」と目を細め、「頼りになるエースになりかかってるね」と称えた。
“力”から“力と技”へ 変わりつつある投球スタイル
さらに、「(球速は)意識してなくはないですが、勝負どころを見極めて力の加減をしています」とペース配分にも気を配るようになった。これには受ける捕手・鮫島哲新(4年=鹿児島工高)も「以前ほど力、力じゃなくなって、投球の幅が広がっている。ここっていうところでいい投球をしてくれた」と頼もしげ。“力の澤村”から“力と技の澤村”への成長がこの日の完投勝利につながった。
試合後、今季の目標を問われた澤村は、意外な答えを返した。
「自分と山崎(雄飛=4年・芝浦工大高)で10勝したい」
10勝とは、5チームすべてから勝ち点を挙げるということ。つまり、優勝するということだ。
「自分が3勝で山崎が7勝でもいい。とにかく2人で10勝して、監督を優勝させてあげたい」
ドラフトイヤーのことし、個人の成績や球速にこだわったとしても、誰も文句はいわないだろう。しかし、澤村はチームの優勝を第一の目標に掲げた。そのフォア・ザ・チームの精神が、“チームに勝利をもたらすエース”から“チームに優勝をもたらすエース”への進化を後押しするはずだ。
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