156キロ右腕が見せた成長=ドラフト1位候補 中大・澤村拓一リポート

スポーツナビ
 東都大学リーグ第2週、国士大vs.中大の1回戦が13日、神宮球場で行われ、中大が3対2で勝利した。チームにとっての開幕試合となる中大は、昨秋大学生の神宮最速となる156キロを計測したエース・澤村拓一(4年=佐野日大高)が先発。延長10回を4安打1四死球7奪三振、2失点で完投し、勝利投手となった。力のある速球、切れ味鋭い変化球でドラフト1位候補の呼び声も高い澤村のことし最初の登板をリポートする。

高橋監督「頼りになるエースになりかかってる」

“エース”がチームに勝利をもたらす者を指すのならば、この日の澤村には、その言葉がぴったりだ。高橋善正監督流に言えば、「相手より少ない点数に抑えてチームを勝たせる」選手。同点に追いつかれても決して勝ち越しを許さず、かつ失点の不安を与えない安心感は、まさにエースの姿だった。

 この日の澤村は、初回からエンジン全開。最速153キロの直球に140キロを超えるフォークを交え、3回までパーフェクトピッチング。序盤でドラフト1位候補の実力を証明して見せた。 
 中盤に2点を失い同点に追いつかれたものの、大きな成長が見えたのは、むしろその後だった。味方のエラーで同点とされた5回2死二、三塁の場面。これまでの澤村ならば、悪い流れを断ち切れず、崩れてもおかしくなかった。だが、この日は後続をセンターフライに打ち取り、逆転の芽を摘み取った。最大のピンチを乗り切った澤村はその後、被安打1、二塁を踏ませない投球で相手を牛耳り、延長10回の勝ち越し点を呼び込んだ。
「156キロを出した昨秋の開幕戦(青学大1回戦、3失点で敗戦投手)は踏ん張れなかったけど、今日はミスが出ても踏ん張れた」と本人は納得の表情。高橋監督も「(エラーで)同点に追いつかれてもそこで抑える。それは澤村の持っている力」と目を細め、「頼りになるエースになりかかってるね」と称えた。

“力”から“力と技”へ 変わりつつある投球スタイル

 その成長の影には、変わりつつある投球スタイルがあった。これまでのように直球で押し、力で勝負するのではなく、冬の間に取り組んだというカーブの緩急をたくみに使って打者の打ち気をそらした。「まだまだ精度を上げなきゃいけない」と本人は今後の課題としたが、直球に絞る国士大打線の狙い球を外し、わずか4安打に抑えることに成功した。
 さらに、「(球速は)意識してなくはないですが、勝負どころを見極めて力の加減をしています」とペース配分にも気を配るようになった。これには受ける捕手・鮫島哲新(4年=鹿児島工高)も「以前ほど力、力じゃなくなって、投球の幅が広がっている。ここっていうところでいい投球をしてくれた」と頼もしげ。“力の澤村”から“力と技の澤村”への成長がこの日の完投勝利につながった。

 試合後、今季の目標を問われた澤村は、意外な答えを返した。
「自分と山崎(雄飛=4年・芝浦工大高)で10勝したい」
 10勝とは、5チームすべてから勝ち点を挙げるということ。つまり、優勝するということだ。
「自分が3勝で山崎が7勝でもいい。とにかく2人で10勝して、監督を優勝させてあげたい」
 ドラフトイヤーのことし、個人の成績や球速にこだわったとしても、誰も文句はいわないだろう。しかし、澤村はチームの優勝を第一の目標に掲げた。そのフォア・ザ・チームの精神が、“チームに勝利をもたらすエース”から“チームに優勝をもたらすエース”への進化を後押しするはずだ。
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