センバツ優勝を占う――注目校の仕上がりを最終チェック

松倉雄太

優勝候補の東海大相模と興南に明暗

シート打撃で投球する東海大相模の一二三投手=甲子園 【共同】

 第82回選抜高校野球大会が21日に開幕する。これに先立ち、出場校の甲子園練習が17、18日に行われ、32校はグラウンドの感触などを確認した。甲子園練習での動き、チーム状態を含めて、今大会を占ってみたい。

 32校の主将の中で6人が優勝候補に推したのが東海大相模高(神奈川)と興南高(沖縄)。まず東海大相模高はエース・一二三(ひふみ)慎太がシート打撃で登板するなど、実戦練習に重きを置いた。一二三は現時点で昨秋の球威に戻っていないため、勝てる投球に徹することになりそう。内野のコンバートにも若干の不安が残る。ただ、チーム全体の声はよく出ており、主将・一二三を中心にしたまとまりはさらに強くなった。
 一方の興南高はエースの島袋洋奨が大阪入りしてから体調を崩した。甲子園でも練習には加わらずベンチから見学。18日の報徳学園高との練習試合にも登板しなかったようで、本番へ向けての不安材料が残った。1回戦では関西高(岡山)の堅田裕太との投げ合いが予想されるため、終盤のスタミナがどうか。ただ、昨年春夏と出場しているので、甲子園のマウンドは熟知しているのは強みだ。

上り調子の帝京、広陵高、中京大中京

 甲子園練習で動きの良さが目立ったのは帝京高(東京)、広陵高(広島)、中京大中京高(愛知)の3校。帝京高は12日の慶応高との練習試合で負傷したショートの松本剛の状態が気がかりだったが、甲子園練習では違和感なく動けていた。前田三夫監督も「ホッとした」と話しており、出場に問題はなさそう。伊藤拓郎、鈴木昇太、山崎康晃の投手陣も順調な仕上がりだ。
 広陵高も投手には大きな自信を持っている。エースの有原航平は体も大きくなり、球威も数段上がった。上野健太、川崎真と控え投手も充実し、帝京高の三枚看板と双璧のように感じた。昨秋同様、機動力を駆使して、攻撃力も高い。中井哲之監督も密かに優勝を意識している。史上5度目の夏春連覇がかかる中京大中京高の甲子園練習は打撃で魅せた。主将の磯村嘉孝がレフトスタンドへ一発を放り込み、エース・森本隼平もライトフェンス直撃の鋭い打球を飛ばした。練習とはいえ、インパクトは十分だった。

神宮王者・大垣日大に開星…ダークホースはどこ?

 このほかでは大垣日大高(岐阜)、大阪桐蔭高(大阪)、智弁和歌山高(和歌山)、開星高(島根)といったあたりも光るものがあった。昨秋の神宮大会チャンピオンの大垣日大高は、この春に入っても練習試合で好調。エース・葛西(かっさい)侑也はたくましさを増し、野手陣も申し分のない動きだった。大阪桐蔭高は打撃練習でバットが振れており、投手陣も2年生右腕の中野悠佑が好調。エース・福本翼も14日の関西学院戦で完封している。智弁和歌山高は投手7人を甲子園のマウンドに上げた。高嶋仁監督ははぐらかしたが、期待の3年生右腕・藤井健が好調で球が走っていた。本番でどのような投手起用をするかに注目したい。開星高は打線以上にエース・白根尚貴の成長が目を引いた。体重も増え、スピード以上に重い球質が相手打者を苦しめそう。直球にこだわった神宮大会の反省から変化球にも力を注いでいる。

不安が残る神戸国際大付高・岡本の状態

 近畿チャンピオン・神戸国際大付高(兵庫)は、注目のエース・岡本健の腰の状態が気になるところ。甲子園練習ではマウンドに上がったがやや動きが重かった。18日の岡山理大付高戦でも登板はなかった。ただブルペンではピッチングを始めており、「彼は完璧主義者なので、本番ではやってくれるでしょう」と青木尚龍監督は心配ない様子。大川賢人、大田大和の控え投手は目の色が変わってきている。岡本の調整遅れが、チームに良い影響をもたらしていれば、帝京高相手でも楽しみが膨らむ。

 21世紀枠3校では山形中央高(山形)の左腕・横山雄哉に注目。16日の市川高戦では9回引き分けながら完全試合を達成。17日の甲子園練習でも、キレのいい変化球が目についた。初戦は強打の日大三高(東京)が相手だが、何かをやってくれそうな期待を抱かせる内容だった。

 さて、大会の行方だが、Aゾーンは開星高、広陵高、中京大中京高の3校が中心になりそう。逆にBゾーンはどこが上位に進出しても不思議ではない。初戦で流れをつかむことが重要になりそうだ。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント