今なぜ「秋春制」なのか?=Jリーグ秋春制移行問題を考える:第1回
「2010年からスタート」の予定だった秋春制
「この時期に試合はするもんじゃないね。せめて陽があるうちに開催すべきだよね」
「こういう状況でも、あのお方は『サッカーは冬のスポーツ』とか言うのかしら」
「VIPルームは暖かいから、たぶんお客さんのことは気にしてないんだろうよ」
取材現場でも、こうした会話が何度かささやかれた。「あのお方」とはもちろん、犬飼基昭JFA(日本サッカー協会)会長のことである。第11代会長に就任した2008年7月12日以降(いや、それ以前から)、この人の主張はJリーグのシーズン秋春制移行で一貫している。そんなわけで、こうした厳寒の試合にぶち当たるたびに、条件反射的に犬飼会長の顔が思い浮かぶようになって久しい。
もう忘れている方も少なくないだろうが、今年は犬飼会長が就任当初にぶち上げた秋春制移行の最初のシーズンとなるはずであった。文末に秋春制の大まかな経緯を記すが、もともとこの問題は、犬飼会長就任以前から存在していた。たとえば06年7月には、代表監督に就任して間もないイビチャ・オシム氏が「日本もヨーロッパにシーズンを合わせた方がよいのではないか」と提言している。さらには、今から10年前の2000年にも「Jリーグネクスト10プロジェクト」の中でシーズン移行問題が議論されており、「06年ごろを目途とした秋〜春制への移行を検討する」ことが盛り込まれている。
こうして考えると、秋春制の問題は「古くて新しい問題」と見ることができる。巷間で何度も語られているシーズン移行のメリット/デメリットは、実のところ10年以上も前から語られていた。犬飼氏が会長になって、いきなりクローズアップされた問題では決してないのである。ただし皮肉なことに、当初は10年にスタート予定とされていた秋春制は、今年に入ってからまったく話題に上がらなくなってしまった。かくして今年も、Jリーグは例年どおり3月に開幕を迎えることとなったのである。