東京マラソン直前! 小出監督がノウハウを伝授=準備編
季節、天候に合わせたウエアを準備しておく
小出 ビニール袋に穴をあけてかぶって走るなど、工夫をしている人も多いけど、確かに動きにくいよね。ランシャツ、ランパンだけのほうが断然走りやすい。小雨であれば、アームウオーマーや手袋をして走ろう。濡れてしまったら外せばいいからね。走り始めてから途中で歩くことはなく、最後まで走れる人なら、体が温まれば多少は我慢できると思うよ。
また、外気にさらされる肌にはワセリンを塗っておくと、多少の防寒効果がありますね。そして、ウエアにも気を配ろう。ランシャツやランパンも夏用と冬用では、まったく違う。素材や機能をチェックして、冬用のウエアを購入しておこう。
それに、雨対策ではないけれど「真綿」もおすすめです。薄い真綿1枚をウエアの下に軽くぬいつけておくと、お腹も冷えなくていいですよ。ただ、土砂降りの中、長い時間を走るときは、やっぱり、ジャケットを着たほうがいいね。最近は、軽量のものが開発されていますから、そんなに気にせずに走り切れるんじゃないかな。
初心者はレース前、10分間ぶらぶら歩くだけでいい
小出 初心者が失敗する原因のひとつは、スタート1時間前からユニホームになって、張り切って走り回っているからなんだよね。それで半分損している。レース用の格好になるのは15〜30分前でいいんですよ。
皆さんがフルマラソンを走るときのウオーミングアップは、ストレッチと10分間ぶらぶら歩くだけでいい。トイレを探しながら10分位ぶらぶら歩く、それでいいの。アップで走り回るよりも、会場に着いた直後とスタート前の2回、トイレに行っておくことを忘れないで。あとは、ストレッチをして足をよく伸ばしておくこと。体が適度に温まったら着替える。パッパと着替えよう。もたもたすると寒くて体が冷えちゃうからね。
ウインドスプリント、いわゆる流しをやっている人も多いね。100メートルくらいの距離をバーッと走っている姿を会場でよく見かける。ウオーミングアップというと、これをイメージする人も多いけど、流しなんてやらなくていいんですよ。
3時間半を切るようなレベルの人であれば、10分位ジョギングしたあとに1〜2本やってもいい。でも練習をしっかりできていない人が、当日だけ突然やっても意味はない。流しなどのアップは、『よーいドン』の合図で最初から飛ばして走るランナーがやること。3時間半以上かかる人は、ストレッチで体をほぐして、体を少し温める程度に歩いておくだけでいい。スタートしてから、最初はトコトコゆっくり走って、ウオーミングアップの代わりにすればいいんだ。
<了>
「レース本番編」は24日に掲載予定
有森裕子、高橋尚子ら五輪メダリストを育てたマラソン指導の第一人者。現在も実業団女子陸上競技部2チームを指導しているほか、市民ランナーの育成にも努めている。1939年4月、千葉県佐倉市生まれ。順天堂大学で箱根駅伝を3回走り、卒業後は千葉県立高校の陸上部を指導。1986年には市立船橋高校を全国高校駅伝優勝に導く。88年教職を辞し、リクルート監督へ。97年積水化学監督。2001年佐倉アスリート倶楽部設立。