吉井、次戦へ大きな弾み 長島・加藤に続くか=スピードスケート
厳しいレースで見せた存在感
この種目では、世界記録保持者のジェニー・ウォルフ(ドイツ)、昨季の世界スプリント女王の王北星(中国)、今季の同選手権総合女王の李の3強が絶対的な存在として君臨。メダル獲得が難しい中で、十分な成果を日本にもたらした。
まず、1回目に6位とまずまずの位置に付けた。上には、そのまま金銀銅を取ることになる李、ウォルフ、王のほかは2人。ともに吉井と同じ38秒5台のタイムで、ターゲットがくっきりと見えた。
「1回目は王と一緒で、行くしかない中で良いレースができました。この大舞台を満足のいくコンディションで迎えられた。体が動いたし、良い緊張があった」
そして、2回目は0秒13タイムを伸ばす。会心の滑りだ。上半身から下半身へバランス良く力が伝わり、体全体が躍動した。「ここへ来て決まるようになった」と言うスタートで勢いを付けると、「コーナーのテクニックも思うような形で行けた」。それに続くバックストレートで加速した。
本人評は「この舞台を目指してやって来たことが出し切れました。練習で滑っていても気持ちよかったので、感じは悪くなかったです」。1月の世界スプリントで総合準優勝したあたりから増していた勢いが、そのまま爆発した印象だ。
日本選手団の団長も務める日本スケート連盟の橋本聖子会長は「1000メートルにつながる滑りになっていました。スピードに乗っているから、いいんじゃないかなー」と、うれしそうに話した。
他人思い“お姉さん”的一面も
4年前のトリノ五輪では、調整にも失敗し、プレッシャーに打ち勝てなかった。惨敗だった。そこからの長く苦しい期間を経て、しっかりと突破口を開いて見せた。
今、吉井には大切な心の支えがある。10カ月になる双子のおいとめいだ。かわいくてしょうがない。「会えるのはたまにです。正月に実家に帰ったときは、だっこしたり、無理やりギュってハグしたり。一緒になって遊んでいて、『どっちが遊ばれてるのか分からないね』なんてお母さんにからかわれていました(笑)」。
子どもが好きで、自身が小さなころは「保育士になるのが夢だった」と言う。
五輪代表が決定した年末の会見の際には、15歳で選出された初代表の高木美帆(札内中3年)が前列真ん中で硬くなっているのを見つけると、右頬(ほお)をツンツンして緊張をほぐした。また、1月のアジア距離別選手権の際には、昨季のワールドカップに抜てきされるも今季は1学年下の高木に先を越された高山梨沙(駒大苫小牧高1年)を励ます姿もあった。
後輩を思いやる、そんな優しさが吉井の強さの一端を形作る。
次は、2日後の1000メートル。昨季から力を入れて取り組んできた重点種目だ。充実感に浸るのもつかの間、「(金メダル最有力の)クリスティン・ネスビット(カナダ)もきょうの500メートルが良かったし、気持ちが引き締まる」と、すぐに頭を切り替えていた。
<了>
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ