青森山田、日ごとに強まる主将・椎名の存在感=高校サッカー3回戦

平野貴也

黒田監督「椎名は過去最高のチームリーダー」

左足前十字じん帯断裂の影響で万全ではないながらも、出場し続ける主将の椎名 【たかすつとむ】

 キャプテン復帰の重みは、日ごとに強まっている。高知(高知)を2−1で破り8強入りを果たした青森山田(青森)の黒田剛監督は、左足前十字じん帯断裂のけがから復帰したMF椎名伸志を「過去最高のチームリーダー」と評価した。

 高知戦は前半終了間際のロスタイムに勝ち越し点を奪い1点のリードで後半を迎えたが、前線が決定力を欠いて守備陣の辛抱強さが問われる展開となった。風上に立った高知のカウンターをケアすべく、チームをまとめたのが椎名だった。
「後半は余裕を持ち過ぎたのか、ロングボールで押し上げていくのか後ろで回すのかがハッキリせず、個々で食い違いが出始めたので意識を統一させた。監督からは後半は0−0でもいいと言われたので守備に専念した」
 ミスを突かれてシュートまで持ち込まれた後半の危険な時間帯を椎名は振り返った。

椎名「神村学園にリベンジしたい」

頼れる主将に引っ張られる青森山田はベスト8に進出した 【たかすつとむ】

 8月の負傷時には冬の選手権に間に合うかどうか危ういとされていたが、必死のリハビリでピッチへ舞い戻った。本人は「見比べると分かりますけど、まだ筋肉が前の状態に戻っていないので、左の太ももの方が細い。昨日(の初戦)、復帰後4〜5カ月ぶりぐらいに初めて80分出場したら、今日は筋肉痛になっていた。出来はまだ5割ぐらい」と話すが、存在感は抜群だ。

 本来はU−17日本代表MF柴崎岳とのダブルボランチで双方が攻守のバランスを取って片方が前線へ飛び出すが、回復状況の懸念から今大会では柴崎が攻撃、椎名は守備の担当と役割を明確にしている。中盤の底でサイドへ自在に大きく展開する椎名の評価を問われた黒田監督は「本当はもっと前にも行ける選手」と口惜しそうに語った。
 もっとやれるという思いは本人にもあるに違いない。高知戦の前半は機を見て攻撃に参加したが、指揮官にたしなめられて後半は守備に専念。個人的に欲が出てきてもおかしくないが「チームをコントロールするのが自分の役割。うまくやれたと思う」と冷静に任務を遂行した。

「椎名の復帰でチームが引き締まった。自分を冷静にコントロールできるようになった」(黒田監督)と自信を深める青森山田は、2回戦で76年の首都圏開催となってからは史上初の2ケタ得点を記録して脚光を浴びた神村学園(鹿児島)と準々決勝で対戦する。指揮官は「8強に残った中でおそらく最も質の高いサッカーをするチーム。決勝戦のつもりで戦いたい。高校総体の2回戦ではPK戦で負けたけど、うちは退場者がいた。何としてもリベンジしたい。8強を越えれば、うちに流れが来るかもしれない」と第79回大会以来9大会ぶりの4強入りがかかる大一番に並々ならぬ決意を示す。

 毎年、見るものを驚かせるトリックプレーを仕込む策士だけに、前回の対戦を生かす対策を練ることはまず間違いない。「(準々決勝が行われる)5日はもっと寒くなって鹿児島勢が動けなくなればいいのに」と早くも決戦のイメージを膨らませていた。チームを束ねる椎名も「個人的にも前回は良いプレーができなかったのでリベンジしたい」と気持ちは同じ。椎名とそしてチームの真価が問われる一戦となりそうだ。

<了>
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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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