学生チームが「打倒JBL」を掲げる意義=天皇杯・皇后杯バスケ オールジャパン2010 第2日

北村美夏
 全日本総合バスケットボール選手権(オールジャパン)の大会2日目、男女学生の上位チームが登場した。学生チームは、前年の12月に行われる全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)でベスト8に入るとオールジャパンの出場権を得る。ただ、学生日本一を決めるインカレにピークを持ってきていた各チームは、コンディション、モチベーションとも100パーセントよりやや落ちるのが例年の状況だ。

 しかしその一方で、「打倒JBL」「打倒WJBL」をシーズンの目標の1つに掲げるチームもゼロではない。2008年より「オン・ザ・コート・ワン」(各チームの外国人選手は、コートに1人のみ出場を認められる)が定められ、男子は特に厳しい戦いを強いられるものの、今シーズンもチーム始動時からそんな目標を立てていた学生チームが複数あった。そのうちの1つ、男子の慶應義塾大(学生2位)の取り組みに迫る。

「JBLチームを倒そう」という目標の裏にあるメッセージ

選手に語りかける慶應大・佐々木ヘッドコーチ。シーズン最後の数日まで選手の成長を促す 【(C)JBA】

 慶應大にとって大会緒戦となった2回戦のタツタ電線(近畿)戦は、持ち味の速い展開に持ち込んで115−74で快勝した。今シーズン、慶應大の佐々木三男ヘッドコーチは「走って120点取る」「20点差つけてこそ実力差」など具体的な数字を課すことで選手たちにハッパを掛けてきたが、この試合では特に数字は求めなかった。
「今シーズンはこれまで高い目標をずっと彼らに掲げてきたので、考え過ぎて重荷になるかなと。今大会はチーム始動時から決めていた『JBLチームへのチャレンジ』まで、とにかく頑張ろうと臨みました」

 ただ、チャレンジするだけなら、慶應大がチームとして目標に掲げる意味はない。なぜオールジャパンの3回戦となるJBLチームとの対戦にこだわってきたのか。それを再確認するために、佐々木コーチはこれが最後の大会となる4年生に向けては厳しい言葉も口にした。「今シーズン何度も大事な試合で勝ちをつかめずにきたのは、4年生がだらしないから。この大会ではどんな試合を見せるのか?」

不本意なシーズンを挽回するためのオールジャパン

 毎年、新チームが始まるときに「このチームは君達4年生と心中だよ」と“約束”する慶應大にとって、チームの結果イコール4年生の出来、4年生の評価となる。では2009年の結果はと言うと、2008年のインカレを制したメンバーも残り実力十分と見られながら、慶早定期戦、首位を走っていた関東大学1部リーグラスト2週、そしてインカレ決勝と確かにここぞというときに力を発揮しきれず、不本意な結果に終わっていた。

 佐々木コーチはこの要因を、「組織の頂点に立つものが“こうやるぞ”と言ったならその方向にチームがぎゅっと1つにならねばならないが、今年のチームはまだ4年生1人1人の個性がうまく機能していない」と見ている。だが、これは裏を返せば、シーズン最後の数日に来ても、まだ4年生たちの成長、変ぼうを信じている言葉でもある。つまり、慶應大にとって「JBLチームを倒そう」という目標には、「まだ終わりではない、さらにもう1歩成長しよう」というメッセージが込められているのだ。

 佐々木コーチはいつも叱咤した後、必ず挽回のチャンスを残している。
「終わり良ければ、ということわざがありますが、それはいかにプロセスから学んで修正できたかという意味です。最後の大会をきちっと締めることができれば、やっぱり彼ら4年生を信じてよかったとなるでしょう。明日は頑張ってくれるはず」

 佐々木コーチからの最後の宿題に対する答えは、大会3日目のコートにある。

1/2ページ

著者プロフィール

 1983年生まれ。バスケットボール男子日本代表を中心に、高校、大学からJBL・WJBL、ストリートや椅子バス、デフバスまで様々なカテゴリーのバスケットボールを取材。中学・高校バスケットボール(白夜書房)などの雑誌、「S−move」「JsportsPRESS」等のウェブ媒体で執筆。2009年末に有志でポータルサイト・「クラッチタイム」創設

編集部ピックアップ

「キャディさん頑張れ!」の声援100回 …

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント