岐阜工、苦しみ抜いた1年を越えて=高校サッカー2回戦
失意の08年から変貌を遂げた09年へ
岐阜工は東福岡有利の声を覆して2−0の快勝。選手たちは成長の跡を見せた 【鷹羽康博】
2年生主体のチームは08年の春先から攻守がかみ合わず、プリンスリーグ東海では屈辱の最下位。2部降格の憂き目に遭うと、インターハイ予選決勝でもライバル・各務原に敗れた。
かつて選手権とインターハイで準優勝経験もあるほどの全国の常連であり、全国屈指の強豪校が、失意の底に沈んだ夏。2年生たちはこの抜け出せないトンネルの出口が、どこにあるのか見いだせずにいた。だが、彼らにとっては復活の夏でもあった。インターハイに出られなかったことで、「じっくりと自分たちの本来やるべきことに取り組むことができた」と清本政勝監督が語ったように、春先から連戦続きだったチームに、ようやく落ち着いてチームとしての強化ができる時間が訪れたのだった。
「自分たちに今何が足りないのか。プライドを捨ててでも、がむしゃらにやらなければいけないことがある」。落ちるところまで落ちたことで、彼らはそこに気がつくことができた。
決してタレントで劣っているわけではない。2年生はタレントぞろいとして知られており、足りなかったのは何が何でも勝つという“戦う気持ち”だった。再起を誓って臨んだ前回の選手権では野洲(滋賀)に敗れはしたが、0−1の大接戦を演じた。
この戦いぶりは、夏までのチームの出来とは雲泥の差であった。2年生が精神的にたくましくなり、チームの中核をしっかりと担ったことで、チームは戦う集団に変貌(へんぼう)を遂げていた。
だが、09年の春。彼らは前年のメンバーが多く残り、自信をつかんだまでは良かったが、少し過信に陥っていた。そのとき、新人戦決勝で帝京可児に敗れたことで、彼らの目は覚めた。
「ざまあみろと言いました。こんなので調子に乗っていたら駄目だからね」。大ベテランの澤藤忍総監督が語ったように、この敗戦で彼らはもう一度気を引き締め直すことができた。これによりチームはより強固な戦う集団に成長していく。
自慢の守備で東福岡に完封勝ち
自慢の守備で東福岡の攻撃をシャットアウト。岐阜工は狙い通りのサッカーを貫いた 【鷹羽康博】
今季のプリンスリーグ東海2部では3位に終わり、惜しくも1部昇格は逃してしまったが、インターハイでは日章学園(宮崎)を1−0、習志野(千葉)を2−0で下して、3回戦で神戸科学技術(兵庫)に0−0のPK戦の末に敗退。ベスト16止まりだったが、堅守を見せつけ、無失点で大会を後にした。
そして選手権県予選を4試合無失点で勝ち抜いて岐阜代表の座をつかむと、迎えたこの日、東福岡を相手に全体がスライドしながら相手のスペースを巧みに埋めていく守備で、攻撃をシャットアウト。攻めても周到に準備してきたセットプレー2発で2点をたたき出し、80分間狙い通りのサッカーを貫いて“赤い彗星”を退けた。清本監督も「プラン通り。選手たちが本当によく戦ってくれた」と納得の表情を見せた。
初戦を突破し、次なる関門は王国・静岡の藤枝明誠。またしても強豪が相手だが、彼らには苦しい思いをしながら培ってきたベースがある。この関門を抜けたとき、彼らの視界には夢の舞台・国立競技場が見えてくるだろう。
<了>
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