大会初日、手応えをつかんだ初出場校=高校選抜バスケ・ウインターカップ2009 第1日

渡辺淳二
 高校バスケットボールの最終決戦、「JOMOウインターカップ2009」がついに始まった! 予選を勝ち抜いた高校生たちにとっては、まさに一世一代の大勝負。どの試合もし烈な戦いが繰り広げられ、華やかなプレーにコートが彩られる。そんな光景が12月29日まで連日、東京体育館で見られるのだ。そして大会序盤に必ずチェックしておきたいのが初出場のチーム。大舞台でプレーするこの時を、チームはどう感じているのか。戦い終えた自分たちをどう見つめているのか。そしてここにたどり着くまでの苦難とは……。

福岡代表の精華女、100周年メモリアルを勝利で飾る

福岡県代表の精華女子は創立100周年でウインターカップ初出場を果たし、メモリアルな勝利を飾った。精華女子#4金原彩姫 【(C)JBA】

 福岡県予選を初めて突破した精華女子は、9回の出場を数える秋田県立湯沢北との接戦を制し(70−65)、創立100周年でメモリアルな勝利を飾った。試合前、精華女の大上晴司コーチは、選手の様子がいつもとは違うのが気になった。普段はよく言葉をかわす選手たちの口数が妙に少ないのだ。そこで、「よくしゃべるように」と選手に向けるが、試合が始まってもどうもチームがぎくしゃく…。動きが固い。表情が暗い。信じられないことに、リング下のノーマークのシュートまで落としてしまう有様。ウインターカップの持つ独特な緊張感にチームが包まれていた。
「普段は、(ウオーミング)アップの時からみんなで笑い合っているのに、今日はなんか、みんながぼ〜っとしている感じでした」と#4金原彩姫が振り返る。
 さらにリバウンドで強さを見せる#14津田史穂莉が前半のうちに3回目のファウルを犯し、チームのムードは悪くなる一方だ。しかし、本来の積極性を失っていない選手がいた。控えの2年生#8徳田華名子だ。資料には「チーム一の頑張り屋」と記されている選手。#8徳田の得点で息を吹き返した精華女は後半、エリアを守るゾーン・ディフェンスを敷いてくる湯沢北に対して、#6岡山華織(25得点)と#9津野彩華(19得点)がタイムリーにシュートを決めて、湯沢北の粘りを振り切ったのである。

 この精華女は夏のインターハイで、東京成徳大学(東京)に1点差の大接戦(97−98)を展開しながらの敗戦。以来、「ウインターカップに出なくてはならない」という、使命感にも似た思いを抱えてきた。
「東京体育館の写真を貼って、ウインターカップに来ている気持ちで練習を重ねてきた」という大上コーチ。東京体育館の入り口からメインコートに至るまで東京体育館の写真をカラーコピーして館内に貼り巡らせたという。
「その写真に、学年ごとに自分たちの目標を書いたんです」と#4金原が力をこめる。さらにこう続けた。
「今日は苦しい時に声を掛けることすらできませんでした。うちのいいところは笑ってバスケットをするところ。明日は高校生らしく楽しんで試合をしたいです」
 フル出場した#4金原から疲労感が消え、ようやく満面の笑みが浮かんだ。

脚力の差が出た那覇。地元インターハイでリベンジを

来年沖縄で開催される地元インターハイに向けて確かな手ごたえをつかんだ、初出場の県立那覇。県立那覇#6宜保沙也佳 【(C)JBA】

 続く第二試合。沖縄県予選を初めて突破した県立那覇は、16回の出場を誇る強豪・福井県立足羽に逆転負け(65−84)を喫してしまった。
 那覇が絶好の立ち上がりを見せながら、少しずつペースは足羽に。足羽の突破力に那覇のディフェンスがついていけないのだ。一方攻撃面でも、足羽の粘り強いディフェンスを嫌がるかのように、那覇の単発なシュートが目立つようになる。那覇の屋嘉謙呉コーチが言う。
「大事なところで足羽さんに走られてしまいました。さすが、しっかり脚が鍛えられています。勉強になりました」

 ガード#4金城夏子も、マッチアップした足羽のガード#4小泉有加への対応に苦労した様子を隠せない。
「どんな時でも一歩目が速いな、って感じました。しばらくしたら足が止まるだろうと思っていたんです。でも足の動き方が、試合が始まった時も終盤も同じようでした」
 それでも那覇は、第3クオーターの終了と同時に1年生#15松村ひらりがブザービーターでスリーポイントシュートを度胸よく沈めて7点差に戻すと、最終ピリオドには一時逆転するシーンも残した。
 しかし#15松村の口から発せられた感想も、十分に鍛えられた脚力、そして体力の差だった。
「内地(本州)には、脚力があって、ぶつかり合いに強いチームが多いと感じます。それでもインサイドを攻めて、相手にファウルをさせようと思ったんですけど、まだだめでした。ディフェンスから走れるように、もう一度、全国に通用する脚を作ります」

 来年沖縄で開催される地元インターハイに向けて、1、2年生を主体とした若いチームはどう変ぼうしていくのだろうか。
「1対1をしっかり出そうとしていたし、戦えた部分はありました。あとはチーム・オフェンスを作り直して、選手層を厚くしていきたいですね。ウインターカップに出られたことは大きいですし、これがスタートだと思っています」
 那覇の屋嘉コーチは、確かな手ごたえをつかんだ様子で力強くうなずいた。

<了>
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著者プロフィール

1965年、神奈川県出身。バスケットボールを中心に取材活動を進めるフリーライター。バスケットボール・マガジン(ベースボール・マガジン社)、中学・高校バスケットボール(白夜書房)、その他、各種技術指導書(西東社)などで執筆。

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