W武藤が越中&ケンコバ組に大苦戦、船木がニセヒクソンに圧勝=全日本プロレス

高木裕美

F−1タッグ選手権でW武藤組が越中&ケンコバ組との接戦を制しV8を達成した 【前島康人】

 全日本プロレス毎年恒例の「ファン感謝デー」が14日、東京・後楽園ホールで開催され、立ち見までギッシリの超満員札止めとなる2100人を動員した。
 本物のプロレスラーとお笑い芸人がタッグを組んで激突する、おなじみのF−1タッグ選手権では、“絶対王者”の武藤敬司&神奈月のW武藤組が、越中詩郎&ケンドーコバヤシのW越中組を下し8度目の防衛に成功した。

 これまでも数々の強豪(?)チームを退けてきた王者組だが、同じレスラー同士のタッグチームと対戦するのは、佐々木健介&ザ・たっち(ニセ健介&ニセ北斗晶)組以来。これまでもハッスルのリングなどで“共演”している挑戦者組は、さっそく、おそろいのハチマキ&Tシャツ&白袴姿でそろえ、結束力の強さをアピール。すると負けじと王者組も入場からアフロヘアのカツラ&サングラスのW井上陽水でインパクト勝負を仕掛けていく。

 さらに、先発した越中と武藤の攻防をなぞるように、ケンコバと神奈月もヒップアタックとドラゴンスクリューを互いに繰り出すが、いざ本物を相手にするとケンコバは動揺してチョップを打ち込むのが精いっぱい。神奈月も低空ドロップキックを放つも何の手応えもなく、それどころか、うっかりパワーボムで投らげられそうになる。
 命の危険を感じた神奈月は、恒例のものまね対決で越中に勝負を挑むと、「ケツにはケツ」という妙な対抗心から「クレヨンしんちゃん」のおケツ星人をむちゃぶり。これを見事に受けて立った越中は、妙なアドリブまでつけて見事にやり返してみせるも、今度は海パンに割り箸をはさんでケツ圧で割るパフォーマンスを振られたため、なんと赤フンドシ一丁になって応戦。ところが、「鋼鉄のケツ」のはずが、思いのほかデリケートで、つるんとした滑らか肌だったため、割り箸は折れず。

 このピンチを救うべく、パートナーのケンコバが得意のマニアックプロレスモノマネ対決を要求。現ノア社長の田上明はともかく、木戸修、石川孝士という渋いチョイスで客席をうならせると、神奈月が十八番の馳浩を見せようとしたスキを突いてサンドイッチヒップアタックを炸裂。まさにタッグチームとしてのすべてをさらけ出してベルト奪取に燃えたものの、惜しくもカウントは2。逆にW武藤のフラッシングエルボー2連弾からの神奈月のシャイニングウィザードにケンコバが撃沈した。

 V8に成功したW武藤だが、試合後は口をそろえて「ここまでやると思わなかった」とW越中の踏ん張りに舌を巻き、神奈月が「サムライ魂を感じた」と絶賛すれば、武藤も「またやりましょうよ」と早くも再戦を要求した。
 これに対し、越中も「まだまだむちゃぶりが足りない」と、さらなる芸の引き出しがあることを示唆し、2人で「やってやるって!」とリベンジ宣言した。

船木がお笑いプロレスに初挑戦

船木が菊タロー扮するニセヒクソン・グレイシーに完勝した 【前島康人】

 8.30両国国技館大会で約20年ぶりのプロレス復帰を果たして以来、様々なことにチャレンジしてきた船木誠勝が、菊タローの仕掛けるお笑いプロレスに初挑戦した。
 今年デビュー25周年を迎えた武藤と新日本プロレスの同期生でありながら、デビュー後間もなく格闘技へ進み、まったく別の道を歩んできた船木だが、両国大会終了の翌日、1年間という期限付きながら全日本マット所属を表明。以来、鈴木みのるとの遺恨シングルマッチや年末恒例の「世界最強タッグ決定リーグ戦」出場などを次々とこなし、最強タッグでは武藤とのコンビで見事優勝を果たした。

 今回の試合を前に一応予習はしてきたという船木の意表を突くかのように、菊タローはヒクソン・グレイシーの入場曲「ラスト・オブ・モヒカンのテーマ」に乗ってグレイシー・トレインで入場。船木がヒクソンに敗れ、試合直後に引退を表明した2000年5月の「コロシアム2000」(東京ドーム)の悪夢を思い出させると、さらにヒクソンばりのファイティングポーズで挑発してみせる。
 約9年半ぶりにリング上で聞いたあの曲に「身が引き締まる思いがした」という船木がローキックを放つと、その瞬間、菊タローはあっさりダウンし、「400戦無敗の男」(当時)の幻想はあっけなく崩壊。目の前の敵を見据えた船木は、その後も菊タローワールドに巻き込まれながらも、「注文の多いブレーンバスター」で菊タローが放ったブレーンバスター予告を逆手にとって投げ返すと、「プロレスのキャリアはオレの方が長い」と上半身裸になってヤル気を見せた菊タローを三角絞めにとらえてギブアップ勝ちを収めた。

「あのくらいが限界。通常の試合の方がもっとしっかりならないと、逆にブーイングが来ると思う」とお笑いと通常の試合との境界線をギリギリのところで踏みとどまった船木は、プロレス復帰してからの充実した3カ月間を「やるべき事、越えるべきハードルはすごく高いんで、その挑戦する気持ちがすごく充実している」と振り返った上で、来年の目標として「ベルトを全日本に置いておくという意味でも獲りにいきたい」と武藤敬司との世界タッグ王座取りを表明。現王者であるGURENTAIの太陽ケア、鈴木みのる組からベルトを奪い取ることを誓った。

諏訪魔ら新世代選手が下克上宣言

諏訪魔、征矢、河野、真田、浜の5人が真の世代交代を誓った 【前島康人】

 メーンイベントでは諏訪魔&征矢学組vs.河野真幸&真田聖也組という全日本の未来を担う新世代対決が実現した。
 この4人に浜亮太を加えた5人は、武藤、小島聡ら上の世代を倒すという目標の元に決起。試合ではその決意を表すかのように4人が溢れるガッツを見せつけ、真田が驚異的な粘りで奮闘したものの、諏訪魔のバックドロップ、ラストライドに力尽きた。
 25分近くに及ぶ熱戦で全日本プロレスの1年間の戦い収めを締めくくった諏訪魔は「2010年は上の世代にどんどん食いついていって、かき乱して、オレたちの新しい時代を作りたい」と、5人で全日本のベルト総獲りを目指すことを宣言。「オレたちが上の世代を食って、新しい全日本を作る」と、真の世代交代をブチ上げた。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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