名門リバープレートが抱える矛盾=成績低迷、下部組織崩壊、暴力との癒着

会長選挙の行方

過激サポーターとの癒着は、リーベルが解決すべき問題のひとつだ 【Photo:AFLO】

 腐敗の根源は、 01年12月に就任した会長のホセ・マリア・アギラールに代表されるクラブ首脳陣である。だが、会長自身はリーベルをスポーツ・マネジメントのモデルだと説明している。1931年のプロ化以降、33回ものリーグタイトルを獲得できたのは、決して偶然ではないというわけだ。実際、リーグ優勝33回という数字は、ライバルのボカ・ジュニアーズよりも9回も多いのは事実だが……(国際タイトルとなるとボカに軍配が上がる)。

 12月5日には会長選挙が予定されているが、アギラールは立候補していない。もともとは20人近くが手を挙げており、最終的に5人が新会長の座を争う。その中には元リーベルの選手で監督も務めたダニエル・パサレラ、83年から89年にリーベルの会長を務めたウーゴ・サンティージ、ロドルフォ・ドノフリオらが含まれる。

 また、ウルグアイ人の元“クラック”(名手)エンツォ・フランチェスコリが、候補者の1人を支持しており、マネジャーに就任するのではないかという話もある。ボカのカルロス・ビアンチ、ベレス・サルスフィエルドのクリスティアン・バセダス、インデペンディエンテのセサル・ルイス・メノッティといった元選手が、すでにゼネラル・マネジャーとしてクラブに中枢にいる。だが、この職業はアルゼンチンではいまだによく理解されていないのが現状だ。というのも、GMは選手を売却するより選手獲得により手腕を発揮するが、この国は選手の輸出国であって、決して輸入国ではないからである。

“バーラ・ブラバ”との癒着

 また、リーベルが早急に解決しなければならないもう1つの問題は、クラブを取り巻く暴力行為である。クラブは“バーラ・ブラバ”と呼ばれる過激サポーターの派閥争いに巻き込まれ、彼らをコントロールすることすらできない状況に陥っている。クラブ役員とバーラとの癒着は以前からあり、バーラはクラブからさまざまな“恩恵”を受けている。07年にはゴンサロ・イグアインの移籍金の配当をめぐって、グループ同士の闘争にまで発展。その後、バーラのある派閥のメンバーだったゴンサロ・アクロが銃で撃たれ、死亡するという事件まで起こった。

 現在のリーベルは初の2部降格という脅威にさらされている。ガジャルド、オルテガといったベテランはいるが、スター選手はもはや存在しない。最も珍しいケースは、98年のワールドカップ・フランス大会で活躍した元アルゼンチン代表のマティアス・アルメイダである。一度は07年に引退したものの、今年に入り現役復帰。今では、同じく90年代の伝説的選手の1人であるレオナルド・アストラーダ率いるリーベルに欠かせない存在となっている。

 いずれにしても、リーベルには財政基盤を整える、暴力を排除するといった抜本的な改革が必要だ。その一方で、今後も首脳陣は資金を調達するため、若手選手を安価で売却し続けなければならないだろう。
 面白い話がある。現在サン・ロレンソに所属するFWファン・カルロス・メンセゲスは、リーベルの下部組織出身だ。彼はトップチームでデビューすることなく、ボルフスブルクに期限付き移籍した(その後、活躍が認められて完全移籍を果たす)。そして、母国に戻った現在、メンセゲスは別のチームのユニホームをまとっているのだ。

 リーベルは矛盾を抱えたままである。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント