名門リバープレートが抱える矛盾=成績低迷、下部組織崩壊、暴力との癒着

低迷する南米の名門

南米の名門リーベルは近年、下位に低迷している 【Photo:アフロ】

 現在のリバープレート(リーベル)は、アルゼンチンという国によく似ていると指摘する人が多い。多様性のある気候、広大な領土、適度な人口、肥沃な土地――基本的に、すべてにおいて発展する可能性を秘めているのに、継続的に混乱から逃れられない――そんなお国柄に。

 リーベルは長きにわたり、南米屈指の強豪チームとして君臨していた。だが、才能溢れる選手たちは母国で活躍した後、ヨーロッパのビッグクラブに次々と引き抜かれ、近年は中位から下位に低迷することも珍しくなくなった。2008−09年の前期リーグでは、名門のクラブ史上初の最下位となったほどだ。

 アルゼンチンのプリメーラ・ディビシオン(1部リーグ)では、過去3年間(1シーズンは前期・後期と2期に分かれるため6期分)の成績の平均値(総勝ち点を総試合数で割った値)を算出し、それを元に新シーズンの顔ぶれが決まる。20チーム中、下位2チームは自動降格、17位と18位は2部の3位、4位チームとのプレーオフを戦う。
 AFA(アルゼンチンサッカー協会)は過去26年間にわたって、最終の平均値を取り続けている。09−10前期リーグでリーベルは第14節を終えて14位。07−08シーズンからの平均値でも1.333と、降格圏まであとわずかのところに位置していると言わざるを得ない。

数多くのタレントを売却するも利益はなし

 リーベルの凋落(ちょうらく)ぶりは今に始まったものではない。クラブの首脳陣たちは長きにわたり、タレントをビッグクラブへ売却することで得た貴重な財源を、無計画な選手獲得でムダにしてきたのだ。

 ここ10年ほどでリーベルが手放した選手をざっと挙げてみても、ゴンサロ・イグアイン(→レアル・マドリー)、ルチョ・ゴンザレス(→FCポルト、現マルセイユ)、ハビエル・マスチェラーノ(→コリンチャンス、現リバプール)、ファン・パブロ・ソリン(→クルゼイロ、現役引退)、ディエゴ・プラセンテ(→レバークーゼン、現ボルドー)、ヘルマン・ブルゴス(→マジョルカ、現役引退)、フランコ・コスタンツォ(→アラベス、現バーゼル)、ヘルマン・ルクス(→マジョルカ)、ファン・パブロ・カリーソ(→ラツィオ、現サラゴサ)、パブロ・アイマール(→バレンシア、現ベンフィカ)、ハビエル・サビオラ(→バルセロナ、現ベンフィカ)、エルナン・クレスポ(→パルマ、現ジェノア)、ファン・パブロ・アンヘル(→アストン・ビラ、現ニューヨーク・レッドブルズ)、マルセロ・サラス(→ラツィオ、現役引退)、マルセロ・ガジャルド(→モナコ、現リーベル)、アリエル・オルテガ(→バレンシア、現リーベル)、フェルナンド・カベナギ(→スパルタク・モスクワ、現ボルドー)、サンティアゴ・ソラリ(→アトレティコ・マドリー、現アトランテ)、そのほか錚々たる顔ぶれが並ぶ。

 だが、これほどの選手たちを売却したというのにリーベルは利益を得られず、それどころか負債まみれで、代わりの選手を獲得する資金さえ手元にない有り様だ。スター候補生の宝庫だった下部組織は崩壊し、かつてのように将来性豊かなタレントがトップチームで活躍するまで育成することもできなくなっていった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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