W杯欧州予選、残る4枠をめぐるし烈な戦い

プレーオフを勝ち抜いたことのないフランスは三度目の正直なるか? 【(C)PanoramiC/アフロ】

 2010 FIFA World Cup(以下、W杯)南アフリカ・欧州予選は、11月14日と18日に行われるプレーオフで、本大会に出場する全13チームが決定する。残る4つのいすを懸けて激突するのは、ポルトガル、ギリシャ、スロベニア、ロシア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ウクライナ、フランス、アイルランドの8カ国。14日の第1戦を前に、各4試合の見どころをお伝えする。

アイルランド対フランス

 欧州プレーオフ出場8チーム中、最少得点(12)・最少得失点差(4)での進出を決めたアイルランド。グループ8では、イタリアに次いで2位に入った。2002年の日韓大会当時、若手ながらベスト16進出に貢献したロビー・キーン(トッテナム)が、現在は主将としてチームをけん引している。02年大会で見せた「ロスタイムのアイルランド」の迫力は、このチームが短期決戦で最も重要な「強いメンタル」の伝統を持っていることを示している。

 一方、前回準優勝のフランスは、主力選手たちとドメネク監督の不和が気掛かり。2006年ドイツ大会ではジネディーヌ・ジダンの代表復帰&負ければ代表引退というモチベーションで持ちこたえたが、今回のフランスに“将軍”はもういない。チームの主軸であるフランク・リベリー(バイエルン ミュンヘン)が負傷していた左ひざの悪化で出場しないことに加え、若手サイドバックのガエル・クリシー(アーセナル)もけがで招集を見送られた。
 また、フランスは過去にプレーオフを勝ち抜いた実績がないことも懸念材料の1つだ(50年のブラジル大会、62年のチリ大会ではいずれも敗退)。

ポルトガル対ボスニア・ヘルツェゴビナ

 強豪ポルトガルに挑むのは、近年急速に力をつけてきたボスニア・ヘルツェゴビナ。前日本代表監督のイビチャ・オシム氏の母国としても知られる。旧ユーゴスラビアの悲惨な内戦で大きな傷跡を残したこのバルカンの国からは、ある者は戦前からの政情不安や戦火から逃れるため、またある者は仕事を求め、多くが近隣のドイツなどに移住した。当時幼かった少年たちは移住先でサッカーを学び、いまやドイツ・ブンデスリーガなどで主力として活躍する年齢となった。彼らが切り開いた道に、平和となった今でも多くの選手が続いている。

 ボスニア・ヘルツェゴビナ代表MFのズベズダン・ミシモビッチ(ボルフスブルク)はドイツのミュンヘン育ち。FWベダド・イビセビッチ(ホッフェンハイム)は16歳だった2000年にスイスに亡命した経験を持つ。もともと旧ユーゴスラビアには技術の高い選手を輩出する伝統がある上、エディン・ジェコ(ボルフスブルク)らを擁する今回の攻撃陣は同国史上最高のメンバーと言えるだろう。

 ポルトガルは、足首を負傷しているエースのクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリー)の状態が思わしくなく、少なくとも14日のホームでの第1戦には間に合わないと見られる。だが、一時は国内メディアが「予選敗退は決定的」と報じた「死の淵」からプレーオフに滑り込んだポルトガルに、失うものは何もない。02年本大会でのブラジルとドイツ(予選成績は振るわなかったものの、共にファイナリスト)、06年大会のフランス(グループリーグで苦戦したが準優勝)がそうだったように、逆に開き直った強さを発揮するかもしれない。

ロシア対スロベニア

 ユーロ(欧州選手権)2008でベスト4のフース・ヒディンク監督率いるロシアは、予選グループ3でチェコを押さえてプレーオフに進出したスロベニアと対戦する。一般的には「ロシアは組み合わせに恵まれた」とささやかれているが、サミール・ハンダノビッチ(ウディネーゼ)がゴールマウスを守るスロベニアは、予選10試合で4失点とオランダに次ぐ最少失点、プレーオフ進出国中ではナンバーワンの堅守を誇る。02年大会でプレーオフを勝ち抜いた経験があるのも強みだ。
 前線の2人はドイツ・ブンデスリーガ所属。ミリボイエ・ノバコビッチ(ケルン)に加え、定位置をつかめずにいたズラトコ・デディッチ(ボーフム)も前節のリーグ戦では先発フル出場している。試合勘に不安はない。

 ロシアはFWロマン・パブリュチェンコ(トッテナム)がチームでレギュラーをつかんでいないなど、ユーロ08の時の力が攻撃陣に見られない。アンドレイ・アルシャービン(アーセナル)、ユーリ・ジルコフ(チェルシー)らタレントがそろうロシアだが、スロベニアの堅守に手を焼いて試合がこう着状態に陥れば、あわやという場面もあるかもしれない。

ギリシャ対ウクライナ

 プレーオフのシード国の中で、FIFA(国際サッカー連盟)のランキング(最新)が最も低いギリシャ(16位)と、非シード国の中で最も高いランキングのウクライナ(22位)。それだけに接戦が予想される興味深いカードだ。敗退したものの、02年にドイツとのプレーオフを戦っているウクライナは経験が生きるか?

 また、欧州予選で最多得点(10得点)をたたき出したギリシャ代表のテオファニス・ゲカス(レバークーゼン)と、母国のディナモ・キエフに復帰し切れ味抜群のシェフチェンコとのストライカー対決にも注目が集まる。ユーロ04を制したギリシャ代表のドイツ人監督オットー・レーハーゲルは、予選わずか6失点で連係抜群のウクライナ守備陣をどのように崩す戦略を見せるだろうか。

<了>

W杯予選 フジテレビNEXT・ONE放送予定

11月9日(月)15時より、CS放送フジテレビNEXTでW杯欧州予選、スペイン対ボスニア・ヘルツェゴビナ(2008年9月6日開催)を再放送。プレーオフでポルトガル代表に挑むボスニア・ヘルツェゴビナ代表を、ジェコ、ミシモビッチら主力が出場したこの試合でチェックしてください。

そして、11月14日(土)から始まるW杯欧州予選プレーオフの放送を、フジテレビNEXT・ONEで予定しています。放送スケジュールは、いずれも「2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ・欧州予選 番組オフィシャルサイト」でご案内しています。

そのほかの各国「代表戦セレクション」もフジテレビNEXT・ONEにて順次放送中です。今後のサッカー番組放送予定「特集ページ」もご覧ください。
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