混戦のワールドシリーズ、松井秀喜が決めて1勝1敗に

杉浦大介

前評判通りの展開へ

第1戦では頭脳的なプレーも見せたフィリーズのロリンズ 【Getty Images】

 2009年ワールドシリーズは、2戦を終えて1勝1敗。シリーズはこれからフィラデルフィアに舞台を移す。開戦前から「近年最高の激戦シリーズになるか」と話題を呼んだ対決は、前評判通り混戦の様相を呈し始めている。
 今季半ばごろから「リーグ最強」の評価を欲しいままにしてきたヤンキースにとっても、昨季王者はやはり恐るべき相手のようである。

 フィリーズといえばパワーばかりが特筆されるが、最初の2戦で誇示したように、打線だけのチームでは決してない。第1戦を支配したエースのクリフ・リーは今後もヤンキースにとって脅威の存在であり続けるはず。今夜の試合でジミー・ロリンズがバーネットを揺さぶったように、足で相手守備にプレッシャーをかけることもできる。また第1戦では遊撃手のロリンズが、飛球を処理した際に走者の松井をわなにはめる印象的なトリックプレーを見せてくれた。

「大試合で試みるには度胸のいるプレー? その通りだけど、シーズン中も何度か成功していたから自信はあったんだよ」
 今夜、試合前の記者会見からの帰り道につかまえて話を聞くと、ロリンズはいつもの少々格好つけた調子でそう話してくれた。そう、何よりこの自信に満ちた態度、普段通りの野球に取り組む姿勢こそがフィリーズの怖い部分なのだ。その点が揺らがない限り、ツインズやエンゼルスが犯してくれたような浮き足立ったミスを、ヤンキースはフィリーズから期待することはできそうにない。

地元では圧倒的な強さのフィリーズ

 その自信の震源地は監督であるのかもしれない。今夜の第2戦の8、9回、ヤンキースの守護神マリアーノ・リベラに39球を投げさせた見応えある攻防の後で、マニエル監督はこう述べている。
「私たちはリベラだって打つことができる。どんなクローザーだって打ち込める。すでにそれを証明して来たんだ」

 史上最高のクローザーと呼ばれる男ですら、恐れるに足らず。だとすれば、もちろんヤンキースのオーラなど恐れる必要もない。
 そしてこの誇りに満ちあふれたフィリーズは、この時期には圧倒的強さを誇る地元での戦いに臨むことになる(過去2年のプレーオフ戦でホームでは11勝1敗)。ニューヨーク以上に熱狂的なファンが、ゲームを通じてタオルを振り回し続ける敵地。全米一と言われる強烈なヤジが飛び交う完全包囲網の中で、ヤンキースは冷静さを保ち、昨季王者を下せるのかどうか。

 波瀾(はらん)万丈だった09年シーズンは、ここにクライマックスを迎える。アメリカが誇る古都・フィラデルフィアの地で、今季のチャンピオンに相応しいのがどちらであるかはっきりと見えてきそうな気がしてならないのだ。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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