NBA開幕! シャックとレブロンの夢コンビ、キャブスに注目

宮地陽子

今季、シャックがキャブスへ移籍

キャブスへ移籍したシャキール・オニール。レブロン・ジェームスとのパワフルコンビで目指すは優勝だ 【Photo:NBAE/Getty Images】

 NBA選手がほかの競技に挑戦したら──。そんな想像を実現させた番組が、この夏に米国で放映になった。「シャック・バーサス(Shaq Vs.)」というタイトルで、シャキール・オニール(シャック/クリーブランド・キャバリアーズ/キャブス)が、各スポーツ界のトッププレーヤーとそれぞれの競技で対戦するという番組だ。ベン・ロスリスバーガー(NFLピッツバーグ・スティーラーズ)とアメリカン・フットボールで競い、ミスティ・メイ&ケリ・ウォルシュとはビーチバレーの試合をし、アルバート・プホルス(MLBセントルイス・カージナルス)相手にホームラン競争し、オスカー・デラホーヤとボクシングで戦い、マイケル・フェルプスと水泳で競った。対戦前には、その道のプロに教わってトレーニングもしており、番組宣伝の言葉を借りれば、「究極のクロススポーツ・トレーニング」だという。つまりテレビ番組であるとともに、シャックの秋からのシーズンに向けてのトレーニングの一環だったらしい。
「長い間同じことをやっていると、すべてにあきあきしてしまう」とシャックは言う。「いったい、どれだけステアマスターやトレッドミル、エリプティカルをやればいいんだい? 1日に2回ずつやっていたら飽きてきてしまう。それより、もっといろいろなことをやりたかったんだ」
 一つのことにこだわるよりは、多くのことを経験したいというのが性分なのかもしれない。NBAに入ってからも、オフシーズンになるとラップアルバムを出したり映画に出たり、あるいは警察学校に通ったりと、その好奇心、興味の幅は尽きない。
 NBAでも一つのチームに長く留まるよりは新しい環境を求めてきており、NBAに入ってから今まで4チームでプレーしている。そのうち3つのチームで6回NBAファイナルに進み、2チームで4回の優勝を果たしたのだから、変化はシャックにとって悪いことではないようだ。そして、この秋から5チーム目、キャブスのユニフォームを着ることになった。

「レブロンが輝けるようにするのが役目」

 シャックの趣味の一つに言葉遊びがある。「シャック・フー」、「ディーゼル」、「ビッグ・アリストテレス」など、自らにつけたあだ名は数知れず。マイクを前にするとメディアが好みそうなキャッチフレーズが口を飛び出してくる。7月、キャブス入団の記者会見でも、早速、チームのシーズン・スローガンにも使えそうなフレーズを口にした。
「王様(キング)のために指輪を」
 キングのあだ名で知られるレブロン・ジェームス(キャブス)はプロ6年目にして、すでにNBAで一、二を争うスーパースター。昨シーズンのリーグMVPでもある。ただし、チームは2007年にNBAファイナルに進出したものの、目の前で優勝を逃した。そんなレブロンのために今シーズンこそ優勝指輪を勝ち取ろう、というわけだ。

「僕は個人の栄誉が欲しくてこのチームに来たわけではない」とシャックは言う。「17年間NBAにいて、考えられるものはほとんどすべて勝ち取ってきた。レブロンが輝けるようにするのが自分たちの役目だ」

パワフルなコンビで目指すは優勝

 レブロンとシャック。年齢も一回り違い、ポジションも違うが、共通点も多い。二人とも周りを笑わせるのが好きな道化師で、天性のリーダーシップを備えているところも似ている。周りを圧倒するほど規格外のパワー、サイズを備え、その割に機敏な動きで相手を翻弄(ほんろう)するところも同じ。その二人がチームメートとしてプレーすることになるとは、少し前まで誰も思いもしないことだった。
 当のレブロンですら「シャックと一緒にプレーすることになるとは思ってもいなかった」と言う。「夢見たことはある。殿堂入りするような選手と一緒にプレーしたいと夢見たことはあったけれど、シャックと同じチームでプレーすることになるとは思ってもいなかった」。

 二人のプレーがかみ合えば、対戦相手にとっては手がつけられないようなパワフルなコンビとなることは間違いない。キャブスが今シーズンの優勝候補の一つにあげられるのも当然のことだ。
 とはいえ、そんなキャブスにとっても優勝への道は楽なものではない。何しろ、昨シーズンのチャンピオン、ロサンゼルス・レイカーズ、そのレイカーズにNBAファイナルで敗れたオーランド・マジック、2007−08シーズンのチャンピオン、ボストン・セルティックス、2006−07シーズンのサンアントニオ・スパーズも、それぞれ夏に大型の補強で優勝できるだけの戦力を整えており、キャブスを加えた5チームすべてが、優勝だけを目標にシーズンを迎えたのだ。

「目標は優勝。(会場を埋める)2万人以上のキャブスのファンにとっても、僕にとっても、シャックにとっても、それが今シーズンの唯一の目標だ」とレブロン。そう宣言してから、同じように優勝を目指すライバル・チームにも思いを馳せた。
「リーグのグレイトチーム、すべてが同じことを考えているはずだ」

 いよいよ現地時間の27日、2009−10シーズンが開幕する。

<了>
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著者プロフィール

東京都出身。国際基督教大学教養学部卒。出版社勤務後にアメリカに居を移し、バスケットボール・ライターとしての活動を始める。NBAや国際大会(2002年・2006年の世界選手権、1996年のオリンピックなど)を取材するほか、アメリカで活動する日本人選手の取材も続けている。『Number』『HOOP』『月刊バスケットボール』に連載を持ち、雑誌を中心に執筆活動中。著書に『The Man 〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。現在、ロサンゼルス近郊在住。

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