東京V、新しい形の都市型クラブへ=崔暢亮会長インタビュー

海江田哲朗

東京V会長に就任した崔暢亮氏がクラブの当面の課題と将来のビジョンについて語った 【海江田哲朗】

 現在、東京ヴェルディ(以下、東京V)は歴史的な転換点に立つ。今年9月をもって日本テレビ放送網株式会社が経営から撤退し、新たな経営トップに読売サッカークラブOBの崔暢亮氏が就任した。来たる10月21日、運営法人は株式会社日本テレビフットボールクラブから、東京ヴェルディ1969フットボールクラブ株式会社と改められる予定だ。果たして、崔会長はクラブの再建にどう着手するのだろうか。当面の課題と将来のビジョンについて聞いた。

商店街へのあいさつやビラまきにバンバン出ていく

――経営陣が新体制となってから初のホームゲーム、10月4日のヴァンフォーレ甲府戦では、入場するサポーターにマッチデープログラムを配ったそうですね

 ええ、入場ゲートのところで皆さんを出迎えましたよ。渡貫(大志・代表取締役社長)と小崎(貴紀・取締役)も一緒にね。あの日は試合前にCLUB1969(読売サッカークラブ〜東京ヴェルディOB組織)の集まりがあったので時間的には20分程度でしたが、いい経験をさせてもらいました。

――自発的に思い立ったのですか?

 いえ、たまたま以前から知り合いだった方が、スタジアム・アテンダントのボランティアをやっておられて頼まれたんです。「開場前に集合するボランティアのみんなにひと言あいさつをいただけませんか? そして、できたら少しの時間でも一緒にサポーターを迎えてくれたらうれしいです」と。両方ともお安い御用でした。

――皆さん、いきなりの会長の顔見せに驚かれたのでは?

 どうですかね。そんなの普通でしょ。わたしは平気ですよ。これから時間の許す限り、商店街へのあいさつやビラまきにバンバン出ていくつもりです。例えば、自治体が出資してくださっているホームタウン(稲城市、多摩市、日野市、立川市)においしいラーメン屋さんがあったとしますよね。どうします?

――食べてみたいです

 もちろん、わたしだって食べたい。いや、そういう話ではなく(笑)。クラブの代表者としてごあいさつもせず、暖簾(のれん)をくぐれますか?

――まあ、食べるくらいなら

 できませんよ。駅前のビラ配りやサッカー教室など、クラブとしてきちんとした活動を示さなければ、せっかくいいお店を知ったところで行きたくても行けない。わたしはおいしいラーメンや餃子を堂々と食べたいんです。

読売グループとのつながりが完全に途絶えるわけではない

――お考えは分かりました。ところで、今回の株式譲渡について、Jリーグ理事会は条件付きで承認ということになっています。そのひとつに、11月16日までに事業計画にあるスポンサー料収入5億4000万円の契約を確定することとありますが、手応えはいかがですか?

 この短期間に10億円集めるように言われたら困ったでしょうが、額自体はそれほど高いハードルとは思いません。もともと東京Vの経営を成り立たせるために最低限必要と設定したラインです。幸い、これまで支援してくださっている既存のスポンサー企業があることですし、これに新規分を上乗せすればクリアできると考えています。楽観しているわけではなく、それくらい集められる根拠がなければ、この仕事をやろうとは思いません。

――気の早い話ですけど、新規のスポンサー企業は何社ほど増える見込みですか?

 交渉中ですが、15社前後になるでしょうか。既存のスポンサー企業には新たな提案をし、引き続き支援をお願いしています。感触は悪くないですね。

――今後、読売グループとの関係は?

 日テレ・ベレーザのネーミングライツ料(推定1億円)をはじめ、つながりが完全に途絶えるわけではありません。そもそも、日本テレビが5〜20%の株式を保有する共同経営の案もありました。最終的に向こうの経営判断ですべての株式が譲渡される形になりましたが、本来われわれは手を組む用意があったんです。資本関係がなくなったとはいえ、読売新聞や日本テレビには東京Vを応援してくださる方がたくさんいらっしゃいます。そういった人たちとは「近い将来、事情が許すようになれば、一緒に仕事をやりましょう」と話し合っています。それがスポンサードなのか、資本参加なのかは分かりませんが。

――来季の総予算は?

 今季の事業規模17〜18億円の約半分、9億5000万円に設定しています。もっとも、これは想定し得る下限で、より多くのスポンサードを得られたり、入場者収入を増やすことができれば、引き上げることが可能になります。JリーグからはJ2で地道に経営しているほかのクラブを見習うように指南を受けました。徹底した堅実路線を歩むことになります。

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著者プロフィール

1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディを中心に、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『Soccer KOZO』のほか、東京ローカルのサッカー情報を伝える『東京偉蹴』など。著書に、東京ヴェルディの育成組織にフォーカスしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)がある。

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