欧州のスカウトが見たU−17日本代表と宇佐美=スペイン遠征で見えた根本的な問題
U−17日本代表の現在地を探る
スカウトから絶賛された宇佐美 【Alberto Iranzo】
U−17日本代表を率いる池内豊監督は、全日程終了後、「1戦1戦、いろいろと試しながら積み上げてこれたのでいい大会だったと思います。ここに来るまでコンディションが悪い選手が多かったため、3試合目(セルティック戦)はだいぶきつくなりましたが、選手たちはよくやってくれました。また、(この大会は)30分ハーフで本来のサッカーと違うため、先制点や1点の重みをいつも以上に感じることができました」と大会を総括した。
前もって告白しておくと、わたしは日ごろスペインで取材活動をしているため、U−17日本代表の試合を見たのはこれが初めて。宇佐美貴史(ガンバ大阪)、宮吉拓実(京都サンガ)と2選手がすでにJリーグデビューを飾っており、それ以外にも粒ぞろいの選手が多いタレント集団ということで日本では「プラチナ世代」と呼ばれているが、逆に過度な期待もひいき目もなしに全4試合を取材させてもらった。ここでは過去・現在・未来という1つの線の中でU−17日本代表や各選手の成熟具合を測るのではなく、スペインのサッカー関係者の評価を基に、現時点でのU−17日本代表の現在地を確かめてみたい。その上で、チームや選手の課題や今後の可能性を探ろうと思う。
スカウトなど関係者が宇佐美を絶賛
チェルシーのスカウト、ソル氏は「今大会最も驚きを感じたチーム」と日本を評した 【Alberto Iranzo】
実際にU−17日本代表と対戦したチームの監督からも賞賛の声が続いた。レアル・マドリー・ユースのアルベルト・トリル監督は、「何とか引き分けに持ち込むことができたが、とても手ごわい相手だった」と語り、U−17日本代表に大敗したビジャレアル・ユースのアントニオ・ディアス監督も、「われわれが全くダメだったわけだが、それでも日本は素晴らしいサッカーをした。代表とはいえ、チームとしてのポジションバランスがいい」と高い評価を与えていた。
また、チームへの賞賛以上に大会関係者が声をそろえて絶賛したのが3得点で宮吉とともに大会得点王に輝いた宇佐美だ。初日のミラン戦から高精度のキックと変幻自在のドリブルを見せつけ、翌日のレアル・マドリー戦では芸術的なFKを決めるなど2得点の活躍。3日目のセルティック戦では2戦連続となるFK弾を決め、「タカシ・ウサミ」の名前はあっという間に知れ渡った。
このため、セルティック戦の後半に交代でベンチに下がる時にはスタンドからまるでホームチームの選手が交代するかのような拍手が鳴り響き、最終日のビジャレアル戦で先発から外れると、観客から「あのすごい日本人選手は出ないのか」という残念そうな声も聞かれた。
また、こちらがスカウトなどに「日本代表で印象に残った選手は?」と質問する度に「背番号16(宇佐美)」という答えが返ってきた。先に紹介したチェルシーのスカウト、ファン・ソル氏も「特に16番が良かった」と宇佐美をしっかりチェックしていた。ちなみに、宇佐美以外で評価の高かった選手は、MF柴崎岳(青森山田高校)、FW杉本健勇(セレッソ大阪ユース)、宮吉の3選手だった。
宇佐美に関しては、「タカシについて詳しい情報を持っていないか」と目の色を変えて迫ってくるスカウトもいた。確かに、客観的に見て宇佐美は今大会の出場選手の中で最も完成度が高く、欧州のスカウト陣が「別格」と舌を巻くのも理解できる。日本が7位だったため、大会最優秀選手には選出されなかったが、もし日本が4位以上の結果を残していれば、ほぼ間違いなく前回大会の仙石廉(柏レイソル)に続き2年連続日本人選手が選出されていただろう。