VVV本田「3試合連続ゴールは貪欲に狙っていた」〜オランダからの叫び〜

中田徹

ファン・ダイク監督「1部リーグは圭佑にとってやりやすい」

3戦連続ゴールを決めた本田(右)。「自分の得意とするゴール」と得点シーンを振り返った 【Photo:PICS UNITED/アフロ】

 先日、午前中にVVVの練習を訪れてみると、本田圭佑の姿がなかった。
「圭佑はバルセロナへ行っちまった」
 監督のファン・ダイクが叫んでくる。僕は親指・人さし指・中指をこすり合わせて「移籍金、たっぷり入ったね」というメッセージを送ると、ファン・ダイクも「たっぷり、たっぷり」と指をこすり合わせて返してきた。それから突然、左足でグラウンダーの強烈なパスを蹴ってきた。
「午前中は休ませたんだ! 圭佑は午後の練習に参加する」

 この時点でオランダ1部リーグは第2節を終え、本田は3ゴール1アシストという好調なスタートを切っていた。
「1部リーグの舞台は圭佑にとってやりやすい。何せスペースがあるからな」とファン・ダイク。しかし、2部時代に比べると本田のボールタッチ数は減っているように思えるし、第2節で対戦したADOデン・ハーグは4−1−4−1で中盤のスペースを消してきた上、デニー・バイスを本田のマーカーとして付けてきた。スペースが本田にあるとは思えなかった。
「お前、ホントに試合見た? 圭佑のスペースはあるんだよ」
 笑いながらファン・ダイクは言う。その背後では黙々と選手たちが走っていた。

本田「強いチームとやるときは相手の裏にスペースができる」

「午前の練習は筋力トレーニング中心だったんで、『お前は休め』と監督に言われていたんです」と、午後の練習を終えた本田は言った。監督は、週末の一撃のためにエネルギーを貯めさせたのか。

 ところで、監督の言う通り、ピッチの上で実際にプレーする本田は「スペースがある」と感じているのだろうか? ファン・ダイク監督のコメントを本田にぶつけてみた。
「そうなんじゃないですか」と本田。
「ADOデン・ハーグみたいな(VVVと同レベルの)チーム相手だとそんなにスペースはないですが、強いチームとやるときはすごい攻めてくるから、僕らがボールを奪ったときに相手の裏にスペースができるのは当然あるでしょう。VVVが昨季2部でカウンターから何回も点を取られたのと一緒のように、1部では相手にとって僕らのカウンターのケアは難しいと思います」

 確かに開幕戦のPSV戦では大きなスペースが本田の前に現れ、そこを変幻自在に使っていた。しかしそんなスペースが現れるのは90分間のうちわずかな時間。しかもボールタッチは減っている。それでも1部のやりやすさもあると本田は感じている。
 まずPSVのような強いチームは、「1人の選手のためにシステムを合わせてこない」(本田)。ADOデン・ハーグはバイスを本田に付けてきたが、「ファウルも辞さない選手と聞いていたんですが、ピッチではあまり感じなかった。そう考えたら2部の方がボールに来ないで、後ろからただ体だけを狙ってくるファウルをしてきた。ADOデン・ハーグ戦に限っては試合が終わった後、体も痛くなかったですね」と本田は語る。

 PSVのアフェライが強烈なファウルを本田に食らわしたこともあったが、確かに1試合あたりに本田が受けるファウルの数は昨季に比べて極端に減っている。そういえばあのファウルの場面も、本田にはものすごく広いスペースがあった。ただ、1部では戦術が洗練されている上、VVVは押し込まれるからボールタッチは減る。そう本田は分析している。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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