G大阪、不調にもがくアジア王者の姿=西野政権が直面する危機

下薗昌記

サポーターが西野監督への抗議行動に出る

ホーム6連敗を喫するなど、G大阪は不調にあえいでいる 【写真は共同】

 昨年のアジア王者が、思わぬ不振にあえいでいる。前人未到のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)連覇を含む「全冠制覇」を目指したはずのガンバ大阪だったが、すでにACLとナビスコカップの2冠を喪失。リーグ戦も首位との勝ち点差は第20節終了時点で14と8位に低迷する。クラブ史上、最も豪華と言われる積極補強を敢行したはずの技巧派集団に何が起こっているのか。

「ニシノーッ、出てこい」「J2に落ちたらどうすんねん」

 ゴール裏に居残ったサポーターの怒号が響いた万博記念競技場。7月15日のナビスコカップ準々決勝初戦で、横浜F・マリノスに1−3と完敗したチームは、クラブ史上ワースト記録となるホーム6連敗を記録。1−4で大敗した4日前の清水エスパルス戦に続いての失態に、約300人のサポーターが怒りを爆発させたのもある意味では、無理もなかった。6月のACL敗退に続いて、ナビスコカップも初戦で2点のビハインド(結果的に敗退)。しかも、リーグ戦でも3連敗で優勝に赤信号が点滅し始めている状況で、常勝クラブには許されない「無冠」の危機が迫っていたのだから。

 いつもは強気な指揮官も、危機感は感じていた。わずか半年前、万博記念競技場で初めてサポーターを招いて行われた新体制会見の場で、西野朗監督は「すべてのタイトルを目標としたい」と強気な全冠宣言をぶち上げただけに、昨年のアジア最優秀監督に対する敬意がみじんも感じられない糾弾に対しても「彼ら(サポーター)がそう思うのもしょうがない」(西野監督)

点を取り切れないことが問題

 昨年、クラブ史上初の栄冠となるナビスコカップ制覇を果たし、リーグ最少失点の堅守で4位に食い込んだ大分トリニータが、今季はリーグワースト2位の失点で最下位に低迷するなどサッカー界の一寸先は闇であるのは事実だが、G大阪の低迷もその戦力と実績を考えれば、やはりサプライズと言わざるを得ない現象の一つだ。

「一番の誤算は、予想以上に相手に厳しく対応されている。ストロングポイントを消され、逆にガンバのウイークポイントを突かれている」。名将は苦しい胸の内をこう打ち明けるが、予兆はすでに昨年から表れていた。
 攻撃力不足――。アウエー全勝という圧巻の攻撃力で制したACLと、マンチェスター・ユナイテッド相手に堂々たる打ち合いを演じたクラブワールドカップでのインパクトが強いゆえに、「ガンバ=アタッキングサッカー」の印象が刷り込まれてはいるが、チームの総合力が問われる長丁場のリーグ戦では、8位という順位もさることながら自慢の得点力も不発に終わり、総得点数はリーグ8位で得失点差で−3と平凡な数字に終わっている。

 そんな現状にクラブも満足していたわけではない。抜群の速さを持つレアンドロと「クロスを生かす高さが足りない」(強化関係者)という欠点を補うチョ・ジェジンを獲得したばかりか、課題と言われたセンターバックにも高木和道とパク・ドンヒョクの日韓代表経験者といった即戦力を獲得。開幕前は指揮官も「スタートメンバーを選ぶのは究極の選択」とうれしい悲鳴を上げていたはずだった……。
 FWの新戦力が開幕前のキャンプで負傷したり、「唯一代えが利かない選手」(西野監督)加地亮が開幕戦で負傷離脱したりと計算外のトラブルはあったにせよ、それを補うための豪華補強だったはず。他クラブがうらやむ戦力を持つ大阪の雄に、こうした言い訳は通用しない。
 橋本英郎は言う。
「昨年から問題は変わっていない。守り切れないことよりも、点を取り切れないことが問題だと思う」

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著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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