“高速水着”とは何なのか?=競泳用水着に起こった革新的開発

スポーツナビ

スピード社の「レーザーレーサー」を着用し、世界記録を連発したM・フェルプス(米国)。一体、“高速水着”とは何だったのか? 【Getty Images】

 水泳の世界選手権(イタリア・ローマ)開催中の24日、国際水泳連盟(FINA)の総会で、来年からの競泳用水着の新規定案がまとまった。これは、昨年から始まった“高速水着”による、世界記録ラッシュを制限するための規定となる。
 北京五輪以来激化した、各メーカーの“高速水着の開発競争”。元をたどると、昨年2月に発表されたスピード社製競泳用水着「LZR RACER(レーザー・レーサー)」の登場が、一連の話題のスタートとなっている。
 では一体、“高速水着”とは何なのか? 今回、競泳用水着に革命を起こした「レーザーレーサー」の秘密について、日本でスピード社製品を取り扱うゴールドウィン社の小嶋正年事業部長に話を伺った。

レーザーレーサー誕生のきっかけは「スパゲティー」!?

日本で「レーザーレーサー」の販売を取り扱うゴールドウィン社の小嶋事業部長。レーザーレーサーの誕生で08年は「競泳水着の開発元年になると予想していた」と話す 【スポーツナビ】

 レーザーレーサー発表前の水着について小嶋氏は「今までの水着は、表面の抵抗を重視し、いかに人の肌より速く泳げるかに重点を置いていました」と語る。スピード社でも以前は、サメの肌をまね、人の肌の表面よりも水がスムーズに流れる水着を作っていた。
 しかし、より進化した水着を追及していく中で、開発の方向転換が始まった。スピード社の研究機関「アクアラボ」のトップであるジェイソン・ランスは「スパゲティーをゆでようとしたとき、乾麺がお湯の中にすーっと入っていくのを見てひらめいた」という“発想の転換“をする。それは、水着の表面だけを考えるのではなく、スイマーが水の中をすーっと泳いでいくには、どのようにすればいいのかを考えるようになったのだ。
「学問的なことで言えば、流体力学で考えるべきだという発想になりました」。

 流体である水の中を泳ぐときは、必ず抵抗が生まれる。この抵抗をいかに軽減させ、スイマーのポテンシャルを引き出すか? これが“高速水着”開発へのスタート地点となった。

NASAとの共同研究で開発を進める

 水の中でかかる抵抗の計算には、スピード社の研究機関と協力している米国国立航空宇宙局(NASA)でも行われた。
「NASAにはスペースシャトルが大気圏に入ったときに、表面にどれぐらい抵抗がかかるかを精密に測れる機械があります。その最先端の技術で、素材の表面にかかる抵抗を測定し、最適な素材の選定を行いました」。

 開発テストには、マイケル・フェルプス(米国)やグラント・ハケット(オーストラリア)といった、世界でも有数のトップスイマーが参加した。体を3Dスキャンで分析し、「ANSIS」というコンピューターの流体力学解析システムにより、彼らが泳いだときに、水の抵抗がどのようにかかるかを研究。そして、抵抗を受けずらい“理想のフォーム”を計算した水着が「レーザーレーサー」になるのだ。

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