“高速水着”とは何なのか?=競泳用水着に起こった革新的開発
スピード社の「レーザーレーサー」を着用し、世界記録を連発したM・フェルプス(米国)。一体、“高速水着”とは何だったのか? 【Getty Images】
北京五輪以来激化した、各メーカーの“高速水着の開発競争”。元をたどると、昨年2月に発表されたスピード社製競泳用水着「LZR RACER(レーザー・レーサー)」の登場が、一連の話題のスタートとなっている。
では一体、“高速水着”とは何なのか? 今回、競泳用水着に革命を起こした「レーザーレーサー」の秘密について、日本でスピード社製品を取り扱うゴールドウィン社の小嶋正年事業部長に話を伺った。
レーザーレーサー誕生のきっかけは「スパゲティー」!?
日本で「レーザーレーサー」の販売を取り扱うゴールドウィン社の小嶋事業部長。レーザーレーサーの誕生で08年は「競泳水着の開発元年になると予想していた」と話す 【スポーツナビ】
しかし、より進化した水着を追及していく中で、開発の方向転換が始まった。スピード社の研究機関「アクアラボ」のトップであるジェイソン・ランスは「スパゲティーをゆでようとしたとき、乾麺がお湯の中にすーっと入っていくのを見てひらめいた」という“発想の転換“をする。それは、水着の表面だけを考えるのではなく、スイマーが水の中をすーっと泳いでいくには、どのようにすればいいのかを考えるようになったのだ。
「学問的なことで言えば、流体力学で考えるべきだという発想になりました」。
流体である水の中を泳ぐときは、必ず抵抗が生まれる。この抵抗をいかに軽減させ、スイマーのポテンシャルを引き出すか? これが“高速水着”開発へのスタート地点となった。
NASAとの共同研究で開発を進める
「NASAにはスペースシャトルが大気圏に入ったときに、表面にどれぐらい抵抗がかかるかを精密に測れる機械があります。その最先端の技術で、素材の表面にかかる抵抗を測定し、最適な素材の選定を行いました」。
開発テストには、マイケル・フェルプス(米国)やグラント・ハケット(オーストラリア)といった、世界でも有数のトップスイマーが参加した。体を3Dスキャンで分析し、「ANSIS」というコンピューターの流体力学解析システムにより、彼らが泳いだときに、水の抵抗がどのようにかかるかを研究。そして、抵抗を受けずらい“理想のフォーム”を計算した水着が「レーザーレーサー」になるのだ。