布ジャパンが世界と戦うには=U−18日本代表布啓一郎監督インタビュー第1回
パス&ムーブは決して日本で習慣化されていない
サッカーの基本であるパス&ムーブが日本では習慣化されていないと指摘する布監督 【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】
出場はすごく重要なことです。やはり環境というのは大きくて、欧州の場合にはバスで数時間移動すれば国境を越えることができます。よって、いろいろな文化のサッカーと触れることができる。それが日本の場合は、海外遠征をするといっても年数回。そうした地理的なハンディキャップを乗り越えるためにも世界の真剣勝負に出て行くことはとても大切なことです。それは選手たちにとって大きな経験にもなるし、それをフィードバックすれば日本サッカー全体の経験となります。
――チーム作りをする上で、選手にはどういったことを要求していますか?
代表チームが集まれる時間というのはそう長くないですから、シンプルなことを要求しています。それは単純明快に常に動きながらボールを正確に扱えること。その動くタイミングをしっかり考えること。「ボールの移動中」という言葉をよく使いますが、自分にボールが入る前に次のプレーの選択肢を持っておくこと。あとは、運動量も含めてパスしたら動くということです。これはA代表も含めて日本のウイーク(ポイント)だと思っているんですけど、パス&ムーブは決して日本で習慣化されていません」
――そうですか? 日本の現場では口酸っぱく言われているような気がしますが?
多分、スペインなどもそうだと思いますが、海外では球際のプレッシャーは日本よりも厳しい。でも日本ではそのプレッシャーがないから、パスをしてから動かなくてもよくなってしまいます。だから、動きながらプレーする必要がありません。逆にプレッシャーがきついと相手の裏を取って、時間を作る必要性に迫られる。次に、パスを出したらパスを受けた選手はプレッシャーが厳しいから、サポートしてあげなくてはいけない。プレッシャーの緩い中ではパス&ムーブは必要ないんです。これから先、ゲームにしろ、トレーニングにしろ、育成面ではもっとシビアな環境を作っていくことが必要なんじゃないかと思っています。
やらなければいけないのは世界で戦えるA代表の選手を育成すること
今は11人全員がフットボーラーの時代に入ってきて、守備だけの選手、攻撃だけの選手というのはなくなっていると思います。今われわれがやらなければいけないことは、ここでの経験を経て、世界で戦えるA代表の選手を育成することです。勝つことと、育てることのバランスはすごく難しくなりますが、やはり最終的にはA代表にいける選手、世界で戦える選手を育成することが目的ですから、両方を追及していかなければいけないと思っています。
――突然ですが、A代表の監督というのは将来の目標に入っていますか?
いや、そんなことはとても……(苦笑)。サッカー協会は今、川淵(三郎)キャプテンの時に2005年宣言をして、2050年までにW杯を取るぞ、2015年までに世界のトップ10の組織であり、実力のある国にするぞ、という目標を設定しています。多くの人が、「そんなに簡単にはいかないだろう」と言いますが、目標設定というのはとても大切なことだと思います。ですので、そういうところはコーチとしての目標の大きなところのどこかにあるとしても、自分にどういう年代が合っているかも大切だと思います。わたしはまだサッカー選手として完成されていない20歳くらいまでの若手が好きなので、今はそこで全力を出そうと思っています。
――市立船橋高校を率いていた時代と今で、指導法に変化はありますか?
変わりはないです。市船時代も含めてわたしは元々、相手にボールがあるというのは好きじゃない。だから、ボールがないなら自分たちからボールを奪いにいきたいし、もちろん、状況によりますけどポゼッションもやるし、カウンターも打つというサッカーをやりたいです。変化という面で1つ言えることは、サッカーがすごく普及してきて、長身の選手で技術的に高い選手が多くなったという印象があります。ただ、根本的に子供は変わっていません。大人のアプローチの仕方で、戦うメンタリティーが足りないなんて言われることが最近多いですが、大人が刺激を与えていけば子供は吸収が早いので成長してくれますよ。
<第2回は17日に掲載予定>