ヒディンク監督「育成の鍵は“模索させる”」=名将に学ぶユース世代の指導哲学

スポーツナビ

日本はフィジカルの強化が必要

講演の後はピッチに出て実際の指導を行った 【スポーツナビ】

――選手のモチベーションを上げるために、指導者が心掛けなければならないことは?

 モチベーションは非常に興味深い問題だと思う。試合に勝ったらご褒美がもらえるという外部的モチベーションもある。しかし、真に重要なのは外からではなく、内から湧き上がるモチベーションだ。若い選手にとっては最も必要な要素といえるだろう。ただ、ここで注意したいのは、モチベーションを与えようとして逆にプレッシャーをかけてしまうことだ。この点については、指導者だけでなく、育成年代の選手を持つ親にも言いたい。親はユースの育成から距離を置くべきである。一般的に見て、親の影響は選手の育成に悲惨な結果をもたらすという。誤ったプレッシャーを子供にかけてしまう親がいるからだ。もちろん、子供たちの向上したいという気持ちは大事にしてやらなければいけない。助ける、励ますことは大切だ。しかし、間違った方向性を示す、あるいはプレッシャーをかけることは育成の道を外れてしまう。

――これから世界のサッカーはどのように進化していくと思うか?

 まず、すでにその傾向として見られるのは、選手のボールコントロールは完ぺきでなくてはならないということ。ボールと友達になる、左右両足でボールを扱えるといった100パーセントの技術が求められる。ただ、この点に関して日本はまったく問題ないだろう。多くの選手が右足でも左足でもうまく使えるのだから。

 問題はフィジカルだ。これからのサッカーでは高い運動能力が必要となる。最近はサッカー選手でもアスリート的な要素も求められている。なかでも、スタミナは非常に重要だ。現代サッカーでは90分間、最後まで走り切らなければならない。その中で高いレベルのパフォーマンスを発揮しなければ意味がない。そこで必要とされるのが選手のリカバリー能力を高めることだ。これは韓国代表がW杯で好成績を残した理由の1つでもある。ロシア代表も同様に、ユーロ(欧州選手権)2008で上位に進出できたのはフィジカルが優れていたからだ。

 フィジカルの強化は長期にわたってスケジューリングされるが、そこではリカバリータイムという概念に注目したい。例えば、韓国の選手は1つのトレーニングを終えても15〜20秒で回復し、心拍数もすぐに戻る。つまり、リカバリータイムは短くてすむ。そうすると、試合でもペースをつかめるようになる。相手は疲れているのに、自分たちは元気でコンディションも良い。技術的な差は別として、少なくとも体力面では自分たちの方がアドバンテージがある。リカバリータイムを短くすれば、試合ではこうした状況が生まれやすい。このことからも、今後はアスリートとしての能力を高めていくことも必要になってくるだろう。

<了>

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